更新日:2023年01月06日 16:25
エンタメ

役所広司が考える“家族の絆”「血のつながりよりも相手の痛みを感じられる関係」

今の時代に映画ができること

役所広司――今回、ブラジル人のエキストラがたくさん出演しています。 役所:90年代半ばに『KAMIKAZE TAXI』(‘95)という作品に、ペルー育ちの日系人タクシー運転手役で出演しました。その時にブラジルから出稼ぎに来た人たちから話を聞いたのですが、その頃の彼らは言葉が大変だったんです。言葉がたどたどしくて、そのことでみなさん大変苦労していました。 ところが、今は、2世3世の時代です。今回エキストラで参加してくれた若い子たちは、日本で生まれて日本人として育っているので、言葉もネイティブの発音。本当に雰囲気は変わりました。

「使い捨て」という言葉に感じたこと

――確かに、劇中に登場するブラジル人の若い俳優さんたちは、完全に日本人の発音で話していましたね。 役所:そうなんです。ただ、雰囲気は変わっても、やはり労働環境の問題は変わらないと聞きます。劇中にも「私たちは使い捨て」というセリフがありますが、90年代半ばに話を聞いた時もやはり「使い捨て」という言葉はよく聞きました。 少子化で外国人の労働者の人たちに頼るしかない。そういう人たちをきちんと地域で受け入れて、彼らが溶け込めるような社会を作っていく必要がありますよね。 一方で、日本は島国です。血が混じることに慣れていない。なので、警戒心がなくならないのかもしれません。 例えば、ウクライナでは紛争が続いていますが、隣のポーランドに避難したウクライナ人は新しい環境に溶け込めずに帰ってくる人がほとんどだと聞きました。やはり溶け込むのは難しいのだと思います。避難民を受け入れる側の国の人たちも、文化や習慣の違う人たちが来るのだからそれは本当に大変ですよね。 映画はそういう過酷な状況や、警戒される側、差別される側の気持ちをリアルに描くことができる。ささやかでもいいので「現状を伝える」という役割を映画が担っていければいいのではないかと思っています。
ファミリア

(C)2022「ファミリア」製作委員会

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子どもには「いい大人」が必要
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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「ファミリア」
1月6日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
出演:役所広司、吉沢亮、サガエルカス、ワケドファジレ、中原丈雄、室井滋、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボ、松重豊、MIYAVI、佐藤浩市ほか
監督:成島出
製作委員会:木下グループ フェローズ ディグ&フェローズ
制作プロダクション:ディグ&フェローズ
配給:キノフィルムズ
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