更新日:2023年01月06日 16:25
エンタメ

役所広司が考える“家族の絆”「血のつながりよりも相手の痛みを感じられる関係」

子どもには「いい大人」が必要

役所広司――「やられたらやり返す」という「憎しみの連鎖」もテーマになっています。 役所:例えば在日ブラジル人を目の敵にする半グレのリーダーの榎本は非常にショッキングな事故に見舞われて家族を亡くしており、そのことが彼を復讐に向かわせています。 でも、若い榎本を人間として成長させる環境や彼が育つ過程において、彼を諭すいい大人がいれば、人を恨んだり、復讐したりするようなことはなかったのかもしれない。 彼はそういう意味では育ってきた環境の犠牲者なのかもしれません。この物語でもそうですが、子どもたちは生まれて来る環境や育つ環境を選べません。いい大人がたくさんいれば、子どもを取り巻く様々な問題はより早く解決するのではないでしょうか。

誠治の不器用な愛情は

――先程お話に出た役所さんが演じた『ユリイカ』の主人公の真も本作の誠治も、人を傷付ける若者に自分が傷付くことで痛みを教えています。 役所:ユリイカの真は、かつて自分も色々あったけれども、バスジャック事件で人が殺されるという風景にショックを受け孤立している幼い兄弟を見て、「自分にできることはなんだろう」と大人として考えたんだと思います。その結果出た行動が、他人を傷付ける兄に対して、自分の手と彼の腕をナイフで切って血を見せるという行為でした。 この作品の誠治も、人を傷付ける榎本に対して「警察に捕まって、刑務所に入って考え直す時間があった方がいい」という思いがあったのかもしれません。そして、榎本がそういう状態になるには誠治自身が榎本に傷付けられる必要がありました。 二人とも決して器用ではないけれども、自分が傷付くことで、他人の痛みを分からせてあげたかったのかもしれません。
ファミリア

(C)2022「ファミリア」製作委員会

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絶望をひとりで背負わないで
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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「ファミリア」
1月6日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
出演:役所広司、吉沢亮、サガエルカス、ワケドファジレ、中原丈雄、室井滋、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボ、松重豊、MIYAVI、佐藤浩市ほか
監督:成島出
製作委員会:木下グループ フェローズ ディグ&フェローズ
制作プロダクション:ディグ&フェローズ
配給:キノフィルムズ
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