更新日:2023年01月06日 16:25
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役所広司が考える“家族の絆”「血のつながりよりも相手の痛みを感じられる関係」

作品では描かれていない誠治の過去

役所広司――誠治は実の息子の学はもちろん、血のつながらないマルコスに対しても愛情をもって接します。そして、学には勧めなかった陶芸家の道を望むマルコスをサポートしようとしますね。 役所:自分は陶芸の世界で生きているけれども、息子には勧めないというのが正直なところなんだと思います。ましてや結婚したばかりで、自分と同じ苦労はして欲しくない。誠治の亡くなった妻は恐らく誠治や学を養うために無理をして働き続けたのだと思います。 息子の学はちゃんとした大学を出て大企業に勤めている。その地位を捨ててまですることではないという判断があったのではないでしょうか。 誠治にもっと心の余裕があれば「貧乏してもいいから、好きなことをやれ」と言ったのかもしれません。でも、誠治の場合は児童養護施設育ちで家族の中で育った経験がなく、息子にもどう接していいのかわからなかったのではないかと。それも含めて不器用な父親の判断だったと思います。 一方、マルコスは、自分の若い頃と似て無軌道な若者。作品には直接描かれていませんが、誠治はすさんだ生活をしていた頃、妻の紹介で陶芸家に出会い、陶芸にのめり込んだという過去があります。なので、彼女に連れられて自分の元に現れたマルコスが、かつての自分と重なったのかもしれません。

絶望をひとりで背負わないで

――役所さんにとっての家族とはどのようなものでしょうか。 役所:例えば、妻は他人です。血はつながっていない。でも、下手をすると血がつながっているより、濃い関係になる。血もつながっていない他人が、なぜこんなに親しくなれるんだろうかと思うこともあります。 そう考えると家族は、血のつながりだけの関係ではない。相手の痛みを感じられる関係が、本当の家族なのではないでしょうか。今もなお、世界中で紛争が起きて、血縁はなくても家族として生きていくことになった人々はたくさんいると思います。彼ら彼女らの良い関係が持続することを祈ります。 ――最後にこの作品の見どころを教えてください。 役所:この作品には「大切な人を失う」という、絶望的なことが人生に起きた人がたくさん出てきます。でもやはり、「救われることはある」と観客のみなさんには思って欲しい。絶望をひとりで背負ったままではなく、希望を持てる出会いを求めていくべきだし、そう思っていれば、希望をもたらす出会いはいつか必ず訪れると思うんです。 『ファミリア』(家族)というタイトルが付いていますが、この映画を見て、両親や兄弟、友達など、しばらく連絡を取っていなかった大切な人に会いたいという気持ちになってくれれば嬉しいですね。
ファミリア

(C)2022「ファミリア」製作委員会

ファミリア

(C)2022「ファミリア」製作委員会

ファミリア

(C)2022「ファミリア」製作委員会

取材・文/熊野雅恵 撮影/萩原美寛 ヘアメイク/勇見 勝彦(THYMON Inc.) スタイリスト/安野ともこ スーツ/参考商品/GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ) シャツ/¥88,000/GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ) チーフ/¥9,350/EMPORIO ARMANI(エンポリオ アルマーニ) シューズ/JOHN LOBB(ジョン ロブ)
ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。
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「ファミリア」
1月6日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
出演:役所広司、吉沢亮、サガエルカス、ワケドファジレ、中原丈雄、室井滋、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボ、松重豊、MIYAVI、佐藤浩市ほか
監督:成島出
製作委員会:木下グループ フェローズ ディグ&フェローズ
制作プロダクション:ディグ&フェローズ
配給:キノフィルムズ
©︎2022「ファミリア」製作委員会
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