武藤敬司はなぜ“天才”と呼ばれ続けたのか。猪木、三沢にはない異次元の魅力
2023年2月21日、“天才”と呼ばれた男、武藤敬司(60歳)が39年間におよぶプロレス人生に幕を下ろした。“LAST LOVE”と銘打った東京ドームでの引退興行は、平日ながら全国から3万人超の観客が押し寄せ、ABEMA TVにおける生配信もプロレスでは最高券売数(実数非公開)を記録した。
引退試合の相手は新日本プロレスのカリスマ・内藤哲也(40歳)。武藤はこれまで闘った盟友たちの技を繰り出すも、必殺技ムーンサルトプレスは飛ばず。激闘の末に敗れた。
しかし、直後に「闘魂三銃士」として平成のプロレスブームを共に牽引した蝶野正洋(59歳)を完全サプライズでリングに上げ2戦目を開始。最後は蝶野の関節技・STFの前に敗れるも、会場はまさに祝福と熱狂の渦となった。
これほどまでに人々を魅了し続ける武藤敬司とは一体何者なのか?
広告業界きってのプロレスファンであり、引退興行もリング間際で観戦したというThe Breakthrough Company GO代表・三浦崇宏氏にクリエイティブディレクターとしての目線から天才・武藤敬司の”凄み”を読み解いてもらった。
「まず、今回の引退試合を観戦しての総論は“武藤敬司はつくづく超一流のプロレスラーである”ということです。
世の中には“三流・二流・一流”がいますよね。ビジネスで言えば三流は自分のために仕事をし、二流は会社のために仕事をして、一流は社会のために仕事をする。
ただ、ごく稀にですがその上をいく“超一流の天才”というのがいる。天才とは自分がやりたいことを突き詰めているだけなのに、結果的に業界や社会全体に革新的な貢献をしてしまう人です。
有名な人物で言えば自分の夢と美学を追求し続け、結果的にIT業界に革命を起こしたスティーブ・ジョブズがいい例でしょう。
武藤は今回の引退試合で内藤選手と闘い、さんざん自分のやりたいことをやった挙句、それだけでは物足りなくなり、放送席にいた蝶野さんを呼びつけて2試合目の引退試合を敢行した。内藤選手も戸惑ったと思いますよ。自分が介錯をして全てを終わらせるつもりだったはずですから。
蝶野さんも呼ばれて本当に驚いていましたね。近くで見ていたABEMAのプロデューサーも慌てふためき、現場は混乱していました。
それなのに結果的に観客は全員感動し、会場は“愛”に包まれた空間になっていた。でも、武藤さんはただやりたいことをやっただけ。超エゴイストなんです。
この徹底した自己愛が本人の意図を離れて周囲や社会に最高の結果を生み出してしまう。だから武藤敬司は天才なんですよ」
自己愛が社会善になってしまう超一流の天才
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