更新日:2023年03月27日 15:58
ライフ

モラハラ加害者が「実は誤解している対等な人間関係」。何でも言い合える仲は間違い

自分の「正しさ」ばかりを一方的に主張するモラハラ加害者

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自分を見下している相手と一緒にいたいと思う人間はいない。「見下し」を無意識的に行っている人間の思考回路とは

 DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。  コミュニティではさまざまな悩みが共有されるのですが、「パートナーからこんなことを言われた」という言葉が共通していることが少なくありません。  その1つが「あなたは私をいつも下に見ている!」というものです。多くの場合、加害者本人には「相手を下に見ている」という自覚が全くなく、そのことがパートナーの怒りや悲しみをさらに深いものにしています。  このような相談がありました。 「家事のやり方や子どもの教育のことなど、パートナーとケンカになると、決まって『あなたは私をいつも下に見ている』と言われるんです。私自身は、パートナーのことをずっと『自分と対等な関係』だと思っていつも話をしています。そんな風にパートナーのことを『自分より下だ』と思ったことは一度もないのですが……」(とある相談者)  今回はこのよくあるセリフの背景に迫りたいと思います。  相談者が言葉通りパートナーを「自分と対等な関係」だと思って話をしているのであれば、相談者には特に落ち度はないように見えます。  しかし、以前に「『自分のほうこそ被害者だ』と主張する人々は話を盛る傾向がある」という記事にも書きましたが、加害者は、自分の加害性を認識することが非常に苦手です。  この相談者も、相手は「下に見られている」と感じているのに、どうしてそう感じるかを相手に聞くことなく、「自分はパートナーを下に見ていない」と自分の主張ばかりを一方的に繰り返しています。  これこそが、正に「自己正当化可能な相談をする」という「悪意のない加害者」の典型的な特徴の一つなのです。

相手が嫌がっていることをやめるのがそんなに難しいのか

 加害(=相手の被害)は、「あなた自身がどう考えているか」とはまったく関係がありません。「相手が実際にどう感じているのか」それがすべてです。いじめの定義と同じです。  相談者は「パートナーのことを『自分よりも下だ』と思ったことは一度もない」「ずっと『自分と対等な関係』だと思っている」と主張されていますが、残念ながら、相談者のパートナーはそのようには感じられていません。  相談者が今後もパートナーと良好な人間関係を築いていきたいのであれば、早急に自分自身の言動を改める必要があると考えられます。  大切なパートナーが「あなたは私をいつも下に見ている」と感じていて、それをやめてほしいと切実に訴えているのです。自分自身の言動を改めるのに、それ以上の理由が必要でしょうか。  こうしたことを踏まえて、相談のケースを改めてパートナー(被害者)の視点から見てみましょう。  このケースの問題点は、大きく3つあります。 ①自分(被害者)の傷つきが軽視・矮小化(=なかったことに)されてしまっていること ②相手(加害者)の感じ方・考え方を一方的に強要(正当化)されていること ③パートナー(加害者)に自分(被害者)の依頼・訴えを聞き入れてもらえていないこと    相手との関係が続く限りこの苦しみがずっと続くのだとしたら、被害者が「相手との関係を終わらせたい」と考えても不思議ではありません
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相手の間にある言葉の定義や解釈のズレ
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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