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安倍政治を検証した『妖怪の孫』。現役官僚たちの“叫び”がリアルだった

現役官僚たちの心の叫び

江島潔と安倍元首相

©︎2023「妖怪の孫」製作委員会

――元経済産業省官僚の古賀茂明さんによる現役官僚へのインタビューもありました。 内山:劇中では、集団的自衛権行使を容認する閣議決定をした時に、反対していた山本庸幸内閣法制局長官を退任させたことについてのコメントが登場しますが、安倍政権以降は、「こんなの無理だろう」「法律的におかしいだろう」ということがまかり通って、それがどんどん上から降って来るそうです。そして、そればかりやっていると感覚がどんどん麻痺してくる。 彼らはやはり「青雲の志」で国を良くするために官僚になりました。要するに、国をきちんと動かしていくために官僚になったのに、なぜこんなことになってしまったのか、という物凄い後悔の念があるようです。しかも10年以上にもわたって…。 劇中のお二人はこの舵取りを少しでも切り変えられるならと出演して下さいました。官僚になるぐらいですから、同じ思いを抱えた人たちはきっと沢山いて、みなさん苦渋の選択の末に現在の職に留まっているのではないでしょうか。若い官僚が辞めていき、優秀な人材は政府に来なくなっている現実…。この国の中枢で起きている危機です。彼らの心の叫びを聞き、震えました。本当に痺れるような事実を聞いたと思っています。

内閣人事局を作って官僚を掌握する

――安倍政権は人事を徹底的にコントロールするという強い意志の元に運営された政権だったのでしょうか。 内山:90年代には官僚批判もあったので、もっと官邸に力を戻さなくてはならない、官僚を変えていかなければならないという流れで、官邸が人事をコントロールするというアイデアは民主党政権の前からありました。各省の幹部人事を首相官邸が一元的に決定し、政治主導の行政運営を実現する「内閣人事局」を作って官僚を掌握するというシステムです。 安倍政権はそれを一気にガツンとやって、そして、そこから一歩進んで官邸の意に反する人のクビを飛ばすということをしていました。 なぜそんなことができるかというと国民の支持があるからです。しかもこの政権は長く続くという確信があるから、官僚たちも反発できない。そうすると骨のある官僚たちは辞めていなくなるという悪循環が続いていました。人事戦略というよりも、とにかく「邪魔なものはどければいい」というぐらいの感じだったのかもしれませんが、それがとんでもない結果を招いてしまいました。
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「反日的な」統一教会と組む理由
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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「妖怪の孫」
新宿ピカデリーほか全国順次公開
企画:河村光庸
監督:内山雄人
企画プロデューサー:古賀茂明
製作:「妖怪の孫」製作委員会
制作:テレビマンユニオン
配給:スターサンズ
©︎2023「妖怪の孫」製作委員会
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