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うつ病から衝動的に電車に飛び込んで両足を失った19歳「今、伝えたいこと」

家族に会って「生きていてよかった」と思えた日

 飛び込んで電車にはねられたものの、身体が車両の下に潜ったことでなんとか一命はとりとめた。だが、片足が車輪の下敷きとなった。 「足がひかれた瞬間、『死にたいのに、足がひかれただけじゃ死ねない』と冷静だった記憶があります。その後、救急隊の人に助けられて手術へ。なんとか命は助かったものの、麻酔から目覚めたときは本当に落ち込みましたね。ひどい言いぐさだと思うんですが、『こんな私が助かってしまった。もっと助けるべき命があるのに、どうして私の命が助けられてしまったんだろう』と……。ただ、その後に親と祖父母が面会に来て泣かれたときに、『あぁ、家族にまた会えた。生きていてよかった』と初めて思えました」  そこからは1年間の入院を余儀なくされたが、リハビリに前向きに取り組むようになって、少しずつ心の安定を取り戻していったという。 「最初は筋トレなどが多かったので『本当にこれをやって意味があるのかな』と疑う部分も大きかったんです。でも、次第に自分が回復している様子が目に見えてわかって、だんだん熱心に取り組むようになりました。リハビリで身体が動くようになるにつれて、自分自身の『死にたい』という気持ちも収まっていったように思います」

ディズニーランドに車いすで行けるほどに回復

 事故から3年。ハードなリハビリを続けた結果、今では東京ディズニーランドまで小さな弟と妹を連れて3人で出かけるほどアクティブな日々を送っている。 「最初は近所のコンビニくらいまでしか行けなかったのですが、少しずつ距離を伸ばして、ディズニーランドにも行けるようになりました(笑)。昔から親が忙しく、妹と弟と3人でどこかに行くのが好きだったので、前と同じように行ける場所が増えて嬉しいです」

きょうだいや入院友だちと公園に行って過ごしたりもするsakiさん

 しかし、治療はまだ続いている。2022年11月には骨髄炎で右足を再切断。そのほか、腰の床ずれ対策など向き合う問題は山積みだという。 「今でも『自分なんていなくなってしまえばいい』と思うことはあります。でも、『自分なんていらない存在だから死のう』とまでは思わなくなりました。事故によって多くの人に迷惑もかけたし、身体もこんなことになってしまった以上、決して『事故があってよかった』とは思えませんが、事故を通じて家族や友人などの大切な存在に気づかされました」
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「誰かのためにできることをしたい」
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