ライフ

うつ病から衝動的に電車に飛び込んで両足を失った19歳「今、伝えたいこと」

「誰かのためにできることをしたい」とTwitterを開始

 そんな彼女が2022年1月頃から始めたのが、Twitter上での情報発信。その発信の根源にあるのは「誰かのために、できることをしたい」という想いだった。 「昔から『他人のためになることをしたい』という想いが強かったんです。看護師を目指したのも、それが動機のひとつでした。でも、事故で足を失ってから、入院中に『自分にできることはなんだろう』と強く考えるようになって。そこで思いついたのが、スマホを通じてうつ病の辛さや障害について発信すること。私の存在を知ってもらうことで、『こんな人もいるんだな』と心が救われる人がいたらいいなって思いました」

成人式前には、お気に入りの振袖で記念撮影!

 発信を始めると、あっという間にフォロワーは増え、1年足らずで約6万7000人に。当初は日に日にフォロワーが増えることに、驚きを隠せなかったという。 「電車に飛び込んで死のうとして、すごくたくさんの人に迷惑をかけている自分が、こんなにたくさんの人に応援してもらっていいのかな……と思うことは多々あります。でも、私自身もそうでしたが、自分自身を『うつ病だ』と認めて誰かに伝えるのはすごく時間がかかるし、ハードルが高い行為です。結果、誰に助けを求めていいのかがわからなくなるし、居場所も失うし、孤独になる。だからこそ、自分の体験を話せる私が、誰かの孤独をなくせるように、伝えられる範囲で気持ちを代弁できたらなって思っています」  こうした発信を通じて、実際、「私も過去に電車に飛び込んだことがあります」という人や、「私も闘病中です」という人からメッセージが来ることも増えたという。 「もちろん送られてくるのは、好意的な意見ばかりじゃありません。時には『人身事故を起こすなんてとんでもない』『お前みたいな迷惑なやつ、いなくなればいい』などと誹謗中傷のメッセージが来ることもありますが、それも一つの意見だと思って、受け止めるようにしています」

伝えたいのは「今見える景色がすべてではない」ということ

 SNS上での発信を通じて共感してくれた人たちから講演会の依頼が届くこともあり、自身の障害や病気について話すことにも意欲的になっている。 「もともと人前で話すのは得意ではなかったのですが、こうした日々の気付きの発信を通じて、より多くの人に障害や病気に対する認識が広まればいいなと思っています」

箱根旅行にも出かけたsakiさん。すれ違った方が坂道を押してくれたり、電車、バス、ロープウェイ、ケーブルカーのすべてで車椅子対応してくれたことに感激

 そして、取材の最後に「これだけはぜひお伝えしたい」とsakiさんは言葉を続けた。 「今、病気や障害によって苦しんでいる方は日本中にたくさんいると思うんです。そんな方々に『今見えている景色がすべてではない』と伝えたいです。私の場合は、『3年間で卒業するのが普通だから、留年してはいけない』との言葉がネックになって、衝動的に電車に飛び込み、両足を失ってしまいました。でも、時間が経ってみれば、留年なんてたいしたことじゃなかったし、あんなに真剣に思い詰める必要もなかった。特にうつ病になると視野が狭くなりがちですが、今見えている景色はほんの一部で、その先にある景色はもっともっと広いんだってことを心に留めてもらえればと思います」 【プロフィール】saki 高校入学後にうつ病となり、16歳のときに自殺未遂で両足を切断。「誰かのためにできることをしたい」という想いから、2022年1月頃からTwitterで発信。今は、「障害やバリアフリーなどの理解を深めたい」と講演会などにも取り組みたいと考えている。 Twitterアカウントは@sakik75069246 取材・文/藤村はるな
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ