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匿名掲示板で叩かれているお気に入りの風俗嬢を助けるために立ち上がったおっさん達だが……

とある特殊スキルを持っている夏井さん

「夏井君はね、匿名掲示板でデリヘル嬢を擁護するプロなんだ」 「そんなプロあるんだ」  夏井さんは基本的に良い人らしく、匿名掲示板で悪口を書かれている子がいればたとえ知らない子でも擁護するらしい。今回、「るね」ちゃんを擁護するために山岡さんの要請を受けて出動となった。 「ちょっとまってください。まさか今から『るね』ちゃんを擁護するんですか」 「あたりまえだろ」  いつの間にか僕も「るね」ちゃん擁護チームにカウントされており、近くの喫茶店で「るね」ちゃんの擁護を書き込むことになった。  喫茶店の奥まった席に座り、改めて3人で顔を見合わせる。 「これは戦争なんだ」  と山岡さんは言った。さすがにそこまでは言い過ぎじゃないかと思ったけど、確かに戦争なんだと言った。とにかく、「るね」ちゃんが気にしちゃっているから僕たち3人で擁護を書きまくる。それで鎮火をはかろうということだった。悪口サイドも複数人でやっている感じなのでとても一人では太刀打ちできない、だからこちらも複数人で行く。そういうことだった。我々はチームだみたいなことも言っていたと思う。

そのモチベーションはどこからきているんだ

「俺は擁護ができればなんでもいい」  夏井さんはそう言った。あなたのそのモチベーションはどこからきているんだ。  早速、件の店のスレッドを開くと活発に「るね」ちゃんの悪口が書き込まれていた。今日の悪口は「るねちゃんの性器が臭い」というトピックだ。 「スタンダードですね。こういう悪口は多い。この場合は、本気で反論するんじゃなく、俺の時はそうじゃなかったという論調で反応してください」  さすがプロ夏井である。判断が早い。 「そうかなあ、俺の時はそうじゃなかったけどなあ。むしろ何も臭わなかった。別の女の子と間違えているんじゃない?」  山岡さんにがそう書き込む。 「グッドですが、完全擁護は怪しいです。擁護しつつ、ちょっと悪い箇所を書いてください。ここは基本的に悪口しかない場所ですから」  夏井さんが親指を立てながらアドバイスする。 「そうかなあ、俺の時はそうじゃなかったけどなあ。むしろ何も臭わなかった。別の女の子と間違えているんじゃない? でもたしかに『るね』ちゃんは会話が盛り上がってくるとなかなかプレイに入らないことあるよな。こっちは早くしてほしいのにw」  このように修正されて書き込まれた。 「グッドです」  また夏井さんが親指を立てる。
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夏井さんの思惑どおりに
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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