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ホンダの“N-BOX依存”は危うい兆候か。「徹底的なコストカット」の功罪

電気自動車への大転換は吉か凶か

 ホンダは経営の重要課題として電動化の推進を掲げています。自動車事業におけるテーマは地球環境への負荷をなくすこと。電気自動車と燃料電池自動車の販売比率を2030年に40%、2035年に80%、2040年に100%を達成するとしています。  Honda e Advanceは一定の人気を獲得しており、着実に歩みを進めているのは間違いありません。国内で次々と販売終了しているのは、ガソリン車から電気自動車への移行途中にあるためと見ることもできるでしょう。  しかし、国内の販売台数全体の中で電気自動車が占める割合は、プラグインハイブリッドカーをあわせてもわずか3%程度。電気自動車が普及するのはまだまだ時間がかかります。電気自動車に経営資源を集中するのはまだ早すぎます。

研究開発費と設備投資費の比率が低い

ホンダ

各メーカーの研究開発費と設備投資費 ※各社決算説明資料より筆者作成

 ファンを魅了するような自動車を開発できない背景として、徹底的なコストカットを推し進めていることもあります。  2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ビジネス環境が急速に変化しました。半導体などの主要部材の供給がストップして製造現場は混乱に陥り、緊急事態宣言の発令で販売活動にも甚大な影響が出ました。  トヨタは2021年3月の営業利益が前期比8.4%減少しました。日産は1506億円の営業赤字(前年同期は404億円の営業赤字)、スズキは9.6%の減少でした。しかし、ホンダは4.2%の増益で、コストダウンによって302億円の削減効果が働いたと説明しています。  2022年度は研究開発費に8040億円、設備投資費に2784億円を投じています。合計1兆824億円が研究開発、設備投資に充当されています。巨額の資金を投じているように見えますが、売上高に占める割合は7.4%。トヨタやスズキ、マツダはいずれも8%を超えています。  研究開発や設備投資は自動車の開発、製造を支える重要な支出項目の一つ。それを抑制しているとすれば、先細りも懸念されます。
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異色の社長が実行した“大改革”
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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