日本はいつから「格差社会」になったのか?元日銀副総裁がわかりやすく解説
日本の当初所得のジニ係数は1970年代半ばから1981年まで低下し、所得の平等化が進みました。しかし、バブル景気以降、不平等化が進みました。
特に大きく上昇したのは、1999年から’11年にかけてのデフレ期です。この時期は雇用が悪化し、非正規社員比率が大きく上昇した時期に重なります。正社員よりも賃金の低い非正規社員の増加が所得の不平等化をもたらしたのです。このデフレによる格差の拡大は海外では見られない、日本的特徴です。
当初所得のジニ係数が上昇傾向にあるもう一つの要因は高齢化です。高齢者の主たる所得は年金と資産所得です。これらの所得の多寡は①年金保険料の支払い期間、②厚生年金と国民年金との差、③資産所得の大きさなどに依存します。①~③を要因として、高齢者の当初所得格差は大きくなり、それが全体のジニ係数を引き上げています。
’17年の当初所得のジニ係数は1990年よりも20%上昇しましたから、日本では30年弱でかなり不平等化が進みました。しかし、この30年弱で所得再分配後のジニ係数は1.8%低下しています。
これは、日本でも欧州ほどではありませんが、所得再分配政策が格差縮小の役割を果たしてきたことを示しています。
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数
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