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医療機関にヤバいクチコミが多い理由と、良いクチコミを書くことで得られる効果

ひょんなところでスコットノートンが効いた

「虫に刺されて腫れた?」  温厚そうな先生がそこにいた。この人が豹変して怒りだしたら嫌だなと思いつつも、事情を説明する。 「昨日は本当に腫れあがっていて、スコットノートンみたいになっていたんですけど、朝になったら腫れが引いていて、でもどことなくスコットノートンぽい腕というか、この辺の筋がほら、スコットノートンっぽい感じじゃないですか?」  と説明する。僕の言い訳も苦しい。そこの筋はスコットノートンぽくない。完全に怒られる。そう思ったが、先生の反応は意外なものだった。 「スコットノートン! いいレスラーだったねえ」 「ご存知ですか!」 「腕がすごく太いんだよね、たしか腕まわりが若い女性のウエストと同じ太さという触れ込みで来日してきたはず」 「そうです、そうです」 「そして必殺技が」 「超竜ボム!」 「よくみたら乱暴に叩きつけるだけ!」 「うける!」

良い口コミを書き込むことで広がる正の効果

 異常なほどにスコットノートンで盛り上がってしまった。横にいた看護師さんが終始、苦虫を嚙み潰したような表情をしていたのが印象的だった。  結局、診察はそこそこに虫刺されの薬を出してもらった。  やはりこういった皮膚のトラブルは、治療によって劇的に改善するわけではない。謎の虫刺されもいまだ痛みは続いている。こうやって、根気強く治すパターンが多いのだから皮膚科はちょっと辛辣なクチコミが多くなるのではないか。  病院の先生といえども人の子である。辛辣なことを書かれて改善しようという気持ちよりは、良いことろを書かれてそこを伸ばそうとする気持ちのほうが生じやすいのではないだろうか。  よほどひどい場合は別だけど、辛辣なクチコミを書きそうになったら、ちょっと立ち止まって考えてみるといいかもしれない。自分が抱いている苦痛がちょっと厳しい視点を作り出しているんじゃないか。ちょっと余裕みたいなものを無くしていないか。 「予約や受付にITのシステムを導入しておりスムーズ。あと、先生がスコットノートンに詳しい」  良いクチコミを書き込む。いいことを書くと自分だって気分が良い。そうするとなんだか虫刺され箇所の痛みも少し和らいだような気がするから不思議なものだ。 <ロゴ/薊>
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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