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パパ活アプリを始めたおっさん。とんでもないプロフィールで釣果を期待するも……

おっさんは二度死ぬ 2nd season

パパ活したいおっさん

 場外馬券場で酒を飲みながらレースを見ていると、知り合いのおっさんが知らないおっさんを連れてくることがある。  なにやら僕に相談があるという人がやってくる。以前に、迷えるおっさんの悩みを解決したことが評判となり、僕自身がこの場外馬券場のフロアにおけるおっさんどもの駆け込み寺みたいな存在になってしまったのだ。たしか、前に悩んでいたおっさんは、スマホの利用料金が高いと悩んでいたので格安SIMを勧めただけだった。こんなもので救世主みたいになるのだから、おっさんどもはまあまあチョロい。 「ちょっとさあ、俺の友達の赤塚ちゃんが悩んでいるみたいだから相談に乗ってやってよ」  そう言って知り合いのおっさんが連れてきた赤塚さんというおっさんは、なんだかヒョロヒョロで弱そうな感じだった。 「何をお悩みですか?」  僕がそう問いかけるのだけど、肝心の赤塚さんはモジモジしていて要領を得ない。いらいらしたのか知り合いのおっさんの方が切り出した。 「赤塚ちゃんね、パパ活やりたいのよ」 「やりゃいいじゃないですか」  即答だ。ただ、これで解決、とはならない。

とにかく、カネを介した関係を結びたいらしい

 おそらく、こうして相談に来たといことは、そのやり方が分からないか、やってみたものの上手くいかなかったか、そのどちらかだ。なるほどそうか、パパ活をやりたいか。  パパ活とは、Wikipediaによると「『パパ』と呼ばれる裕福な男性と食事や映画鑑賞、買い物などのデートをして、その報酬として金銭を受け取る活動である」とある。つまりまあ、金銭を介してデートをするという理解でよろしい。純粋に食事やデートだけをする活動をそう呼ぶ場合もあれば、昨今では肉体関係までも含んでそう呼ぶこともあるそうだ。つまり援助交際の隠しワードとして使われることもあるようだ。ただ、赤塚さんは前者のデート的な活動をやりたいようだった。 「若くてかわいい女の子とデートしたいとか、肉体関係を持ちたいとか、そういうのではなく、あくまでパパ活がしたいんですね?」  念を押す。普通は「若い女と遊びたい!」となるはずで、いきなりパパ活というのはややトリッキーだ。誰だって金を介さずにそういうことができるほうが理想的だからだ。しかし、赤塚さんは違うらしい。とにかくパパ活がしたいというのだ。 「赤塚ちゃんはさあ、お金を出して安心したいのよ、これはお金を介した関係だって認識することで安心したいんだよ。それによって悲しみや孤独を誤魔化すことができるのよ」  知り合いのおっさんの解説に赤塚さんがうんうんと頷く。このおっさんはたまに深いんだか深くないんだかわからないこと言うんだよな。とにかく、よくわからないけどそういうものらしい。
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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