家を追い出された20代弟が帰らぬ姿に…「できることはもっとあった」姉の無念
思春期を含め、10~20代が生活を正すよう咎められたり、働くよう促されたりして、親きょうだいと険悪になるケースは少なくない。そんなとき、「決して勢いで、『家から出て行け』などと言わないでほしい」と警鐘を鳴らすのは、兼本芳香さん(仮名・当時30代)。
兼本さんの両親は家計を支えるために朝から晩まで働き、兼本さんは親に代わってきょうだいの面倒をみた。いちばん年の離れた弟Kさん(当時20代)に関しては、オムツも頻繁に変えていたとか。
「姉の私が言うのはおかしいかもしれませんが、Kは手のかからない弟で、幼稚園や小学校、中学・高校まで何の問題もなく順調でした。どちらかといえばおとなしいタイプで、ゲームやネットを楽しむインドア派。いつも友達に囲まれて、楽しそうでした」
そんなKさんの生活が一変したのは、大学受験の失敗。友達と「一緒の大学を目指そう!」と勉強を頑張ってきたのに、受験に落ちたのだ。Kさんは「一浪をしてでも、みんなと同じ大学に行きたい」と希望したが、両親は「家計的に浪人はさせられない」と拒否。
「Kは、滑り止めに受けた大学へ進むことになりました。でも、まわりには活発な子が多かったみたいで、『疎外感を抱くことがある』と相談されたこともあります。でも、両親も私もそこまで深く考えていなかったので、『頑張って行け』と励ましただけでした」
しかしKさんは、大学を休みがちになる。最初は両親にウソを並べていたが、そのうちごまかしきれなくなり、部屋にカギをかけて引きこもるようになった。両親が仕事へ行った頃を見計らい、バイトをして貯めていたお金を使って食べ物や飲み物を購入する日々。
「そのうち大学に行く頻度はだんだんと減っていきましたが、それでも、何日かに一度は頑張って通っていました。でも、両親は『行く気がない』『どうせ留年するのに、お金の無駄』と、半強制的に大学を辞めさせてしまったのです」
そして、すぐに仕事を探すよう毎日Kさんを急かし続けた。しばらくするとKさんは、部屋からほとんど出てこなくなってしまう。それでも、子供の頃からの友人たちが心配して訪ねてきたときには、部屋に招き入れて楽しそうに会話をしていたと兼本さん。
「でも、両親はそれをよく思わなかった。『学校にも仕事にも行っていないのに、友達とは遊べるのか』『いつからそんな怠け者になった?』と、Kさんの部屋のドアを挟んで責め続けたのです。Kは抵抗もせず、ただ静かに両親の気がおさまるのを待つ感じでした」
大学受験の失敗で失意の底に…
部屋にカギをかけて引きこもる
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5
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