“快挙を成し遂げた”バスケ日本代表。エース対決は完敗も「ゾーンに入った」22歳が勝利に導く
バスケットボール日本代表は8月27日、ワールドカップの2試合目となるフィンランド戦で歴史的な勝利を挙げた。2019年のワールドカップ、2021年の東京オリンピックと、国際大会に出場できるようにはなっても連敗続きで、「1勝」が遠かった日本代表にとっては、まさに歴史的な勝利となった。
ワールドカップ初戦ではドイツを相手に攻守とも歯が立たずに完敗。ただ敗れただけでなく、日本唯一のNBAプレーヤーであるエースの渡邊雄太が足首のケガを引きずり、コンディションが十分でないことが大きな痛手だった。
フィンランドのエースはラウリ・マルカネンで、昨季はNBAのオールスターに選ばれている。彼のマークは渡邊にしか務まらない。渡邊は万全には程遠くてもその役割はこなしたが、それ以上の余力は残っていなかった。29分間超のプレーで4得点。マルカネンには27得点を奪われており、「エース対決」では完敗だった。
しかし、チームは最後の10分間を35-15と圧倒して、最終的に98-88の逆転勝ち。これまでは渡邊が孤軍奮闘しても勝てない国際試合が続いたが、今回はその逆となった。
エースがコンディション最悪の状況で、強敵を相手に逆転勝利できたのはなぜか──。
世代交代を象徴する22歳の富永啓生と、同じく22歳の河村勇輝が大活躍したからだ。2人ともワールドカップ前のテストマッチでは先発で起用されていたが、この2試合はベンチスタートに回された。それでも、その爆発力は日本の秘密兵器となった。
富永は3ポイントシュートを得意とする「和製ステフィン・カリー」と呼ばれており、難しいシュートも立て続けにねじ込む爆発力の持ち主。しかし、ディフェンスが弱いことを理由にスタメンから外されていた。その富永が日本の劣勢を覆す爆発力を見せる。持ち味の3ポイントシュートを決めていくのはもちろん、課題とされていたディフェンスでも必死に足を動かし、相手との激しい衝突も苦にせず食らいついた。
届かない相手のパスに飛びつき、腕を伸ばして、届かないまでも爪先で触れて思いどおりのプレーは許さない。また、ハッスルプレーを見せるたびに、観客席に向かって「盛り上がれ!」と腕を振り上げる。富永のパフォーマンスで7374人の観客が大いに沸き立ち、その熱気に押されるように選手たちは攻守にエネルギーを上げていった。
万全でない渡邊雄太はエース対決で完敗
富永啓生は3Pシュートだけでなく課題の守備でも活躍
フリーランスのスポーツコンテンツエディター。Bリーグ創設の2016年に立ち上がった日本最大級のバスケットボール専門メディアの専属ライターおよび編集者として取材を行い、Bリーグ、Wリーグ、日本代表、高校バスケや大学バスケなど幅広くバスケットボールを取材。今もバスケを中心に多くのスポーツコンテンツ制作を手掛ける
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