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“品質の良いアボカド”は韓国に…青果業界の風雲児が語る「輸入野菜の真実」

「たとえばアジアに輸出されるアボカドは、品質順に上からコリアグレード、チャイナグレード、ジャパングレードとなっていて、日本に割り当てられるアボカドは最低ランクです」  青果専門の商社として業界を牽引し続ける富永商事株式会社の3代目社長・富永浩司氏の言葉に、耳を疑った。同社は1950年の創業から70年以上を数える老舗であり、日本で初めて玉ねぎをニュージーランドから輸入した法人としても名高い。富永氏は、これまで110億円だった売上を就任10年で3倍近くに増やした辣腕だ。  富永浩司氏への取材を通し、青果の“旬”を見極めて世界をつなぐ商社の仕事を知るとともに、普段私たちが耳にすることの少ない輸入野菜の真実に迫った。
富永浩司氏

富永浩司氏

「反省も多い」27歳での社長就任

 社長就任は2014年、富永氏27歳のときだ。学生時代から社を引き継ぐことを意識していたという氏の生活は、世のモラトリアムと称される大学生とは少し異なる。 「小学校の卒業文集にも『会社を継ぐ』と書いたくらい、弊社を良くしていきたいという将来の目標が明確にありました。大学時代は一時休学してアメリカ・カリフォルニアのコミュニティカレッジに入学したんです。休日にはブロッコリーやシトラスの生産現場を見学したり、アメリカ国内にとどまらずメキシコまで足を伸ばしたりしました」  先代が55歳での引退を明言していたため、富永氏に打順が回ってくるのは思いの外早かった。社長引き継ぎまでは1年半。毎年同じようにいかない青果業界において、1シーズンしか経験せずに交代することは打撃だ。下調べに余念がなく、真面目に事業一筋でやってきたとはいえ、振り返れば反省も多い。 「あの当時の私はとにかく利益をあげることを最優先に考え、社員を信じて任せるというよりは、自分が逐一指示を出さないと気が済みませんでした。社内は息苦しかったと思います。結果として、古参の社員を中心に4分の1が離職してしまう事態を引き起こしました

高齢化問題に直面し、M&Aを選択

「一方で、業界全体として、高齢化の問題は根強くありました。古くからの慣習で仕事が回っている部分が多く、新しいアイデアが出づらい状態を打破しなければなりませんでした。試行錯誤を重ねた結果、自社だけで新しい商品を開発することには限界があると気付いたのです」  その結論として選んだのが、M&Aだ。 「他社の強みを活かし、自社のコア事業をより伸ばすことに注力した結果、業績は上向きになりました。ダイジェストで話せばそうなりますが、そこに至るまでには『こんなに失敗を経験したのは自分だけじゃないか』と思えるほどの反省があります。今ではその失敗させてもらえた経験こそ財産だと思えます」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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