仕事

“品質の良いアボカド”は韓国に…青果業界の風雲児が語る「輸入野菜の真実」

30年前は「日本に100%輸出される」パプリカが…

パプリカ

日本で人気なのは「赤いパプリカ」らしい

 世界を相手にした野菜の陣取り合戦は、私たちの知らないところで熾烈を極める。たとえばパプリカだ。 「パプリカの歴史は浅く、30年もありません。韓国で生産され、日本に100%輸出されるのが一般的でした。ところが現在では、韓国の自国消費が60%、日本がその残りです。しかも面白いのは、パプリカには赤色と黄色がありますが、赤色が日本で人気があるためか、韓国ではパプリカといえば黄色です。こんなところにも棲み分けがあるんですね」  青果において常に劣勢に立たされているのかと思えば、日本も健闘している。ジャパングレードが世界に認められた例もある。 「たとえばブロッコリーという野菜は、30年ほど前はアメリカから輸入されたものが100%でした。しかし日本の農家でも作ろうという動きがあり、品質競争を繰り返した結果、現在では国産のみになっています。また、ニュージーランドの著名な農家では、この日本の方式を取り入れて今でもブロッコリー生産を行っています。まさにメイド“バイ”ジャパンの品質が証明されたわけです」

仕事の魅力は「必ず理想に近づいていける」こと

   高齢化を辿る青果業界。若手の最有力株として頭角を現した富永氏には、仕事について持ち続けている矜持がある。 「この仕事は、急に大きな改革をなし得たりする性質のものではありません。正直、古くからの因習も少なくはない。けれども、今あるものを少しずつ良くしていくことによって、必ず理想に近づいていける魅力はあります。世界的な視座をもって自分たちの位置を俯瞰し、どうやって仕事をしていくか考えながら動いていくことによって、日本国内だけではなく世界中の人たちの健康を支える手助けができます。長期的な目標を設定して、はじめの一歩を踏み出していく若手がより参加してくれることを心から願っています」  食卓が華やかに彩られるまでには、世界に散らばる担い手の思慮と忍耐がある。その苦労と責任は前菜と呼ぶにはいかにも重たいが、涼し気な顔でその責務を引き受ける人たちの仕事によって、今日も世界は回る。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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