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“品質の良いアボカド”は韓国に…青果業界の風雲児が語る「輸入野菜の真実」

輸出入だけが仕事ではない

かぼちゃ

かぼちゃも業界内で高いシェアを誇る

 弱冠27歳で社長となり、試行錯誤の末に業績を伸ばした。事実、同社が主力とする玉ねぎ、かぼちゃ、パプリカは業界内で高いシェアを誇っている。だがそんな革命児のイメージとは裏腹に、富永氏は冷静に現状を見ている。 「私たちのような一次産業は、売上をあげる劇薬のような方法がありません。地道に、実直に積み重ねていくことでしか、成果は上がらない。しかし、それだけにやりがいも大きいものです。  商社は野菜を輸入したり輸出したりするだけが仕事ではありません。自国が直接絡まない取引の場合にも、現地法人を介してなどの方法によって、“グローバルな八百屋”として世界をつなぐことができます

もっとも品質の良いアボガドは韓国に…

 輸入野菜については、冒頭の話が気になる。私たち日本人の口に入る青果は世界的にみると必ずしも上質なものとはいえないのか。 「前提として、人体に悪影響を及ぼすものは輸出入が禁止されているので、その点は安心していただいて大丈夫です。ただし、青果は天候による影響などを受けやすく、その年によって品質がまちまちです。阻害品もある。  アジア圏に輸出する場合、もっとも品質の良い上澄みはまず韓国に送られます。韓国は量を絞って輸入する代わりに、高品質なものを高い値段で買います。  対して中国は、消費量が多い韓国に比べて品質はやや落ちても大量に輸入する傾向があります。ただ、たとえばアボカドなら最初は緑色、だんだん色が濃くなって、熟し切ると黒い斑点が出ることがありますが、この黒い斑点などは中国では嫌われます。  その反面、日本はあまり品質に頓着しないので、グレードの低いアボカドの受け皿になっている側面があります。これらのグレード分けは、その国の経済力が反映されているといえるでしょう」  だが富永氏は、この割当が必ずしも悪いことばかりではないと言う。 「先ほども申し上げたように、人体に影響を及ぼすようなものは輸入されてきません。日本では、品質の低いものであっても売り切るだけの販路が発達しているとも言えますし、品質の落ちる青果であっても活用できる技術が優れているともいえます
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30年前は「日本に100%輸出される」パプリカが…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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