“アニメのセル画を文化庁が買い取る”取り組みに賛否…「運営できる人材がいない」
文化庁が漫画の原画やアニメのセル画収集に乗り出す。先日、一部メディアで報じられたニュースをめぐり業界では困惑の声が広がっている。これまでも、幾度も計画されては消えた国による漫画・アニメの保存事業。漫画の原画やセル画を「文化財」とする目論みが不信を呼ぶのはなぜか。
これまでの報道によれば、文化庁では買い取りや寄付などによる収集を想定。今年度中にも、集めた原画やセル画の管理・展示のあり方を定めた基本構想を策定するとしている。
『読売新聞』の2023年8月14日付夕刊に掲載された記事では、2018年にパリのオークションで手塚治虫の『鉄腕アトム』の原画1枚が約3500万円で落札された例をあげ「文化庁は、収集・保存を通じ、海外への流出を抑えたい考えで、海外ファンを日本に呼び込む観光資源としての活用も目指す」と結んでいる。
貴重な資料を保存・展示する構想に業界では諸手を挙げて賛成かと思えば、意外にも不信の声が多い。ある製作会社の関係者は、こう語る。
「買い取りや寄付などにより収集するといっていますが、原画や絵コンテなど膨大な資料のうちなにを幾らで買い取るつもりなんでしょうか。現在でも市場に流出しているものには、数万から百万円単位で取引されるものもあるんですが……。寄付だとしても、製作委員会すべての了解を取る作業は誰がやってくれるのか」
『鉄腕アトム』の原画1枚が約3500万円で落札
「なにを幾らで買い取るつもり」なのか
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』
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