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“薄さ”を追求するのは日本だけ…コンドームメーカーが「安易に海外進出しない」理由

「常識を覆すコラボ商品」を発売した不二ラテックス

 業界2位のポジションにいたのが不二ラテックスでした。この会社は1992年にファッションブランド「ミチコロンドン」とのコラボレーション商品を開発し、一大ブームを巻き起こしました。不二ラテックスは薄さを追求する他社を尻目に、パッケージやブランド力によって付加価値を高めていたのです。山本寛斎とのコラボレーション商品も開発しました。  オカモトと不二ラテックスは、シェアを奪い合うライバルではありませんでした。棲み分けができていたのです。しかし、不二ラテックスも薄さの脅威にさらされました。相模ゴム工業が2014年9月に世界最薄0.01ミリのコンドーム「サガミオリジナル001」を販売したのです。  相模ゴム工業が0.01ミリの開発に乗り出したのは2004年。10年もの年月をかけて製品化を実現しました。  販売前の相模ゴム工業のコンドームカテゴリーの売上高は、25億円。不二ラテックスは19億円でした。2社の差はさほど開いていません。しかし、2015年3月期に相模ゴム工業の売上高は30億円を突破。現在は40億円台で推移しています。不二ラテックスは20億円台での足踏みが続いています。

相模ゴムの製品は世界で売れていてもおかしくないのに…

 興味深いのは、薄型のコンドームを開発した相模ゴム工業の利益率が高まっている点。2013年3月期のセグメント利益率は22.7%でしたが、2015年3月期には30%近くまで上昇しています。コロナで物流が混乱する前の2020年3月期のセグメント利益は33.5%でした。  薄型のコンドームは着け心地が良いために、高単価で販売できることを意味しています。付加価値が高い代表的な商品の一つです。薄型のコンドームの開発はシェアを高めるだけではなく、高単価でも売れるというメリットがありました。  日本のコンドームメーカーは、世界的にも稀な高品質の商品を開発しました。ここだけを切り取ってみると、世界に進出してシェアを拡大し、更なる飛躍に期待できるように見えます。しかし、世界最薄のコンドームを開発した相模ゴム工業の売上推移を見るとわかる通り、爆発的にヒットしているわけではありません。
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コンドームメーカーが「安易に海外進出しない」理由
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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