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「あんな奴ら消えてしまえばいい」DV加害者への厳しい声も。“更生支援の難しさ”を女性理事長に聞く

DV被害者が結局、別れられない理由

――加害者更生支援をはじめたきっかけはなんですか? 栗原:2001年から2015年まで、被害者のためのシェルターを運営していました。その中で「どんなに被害者を守っても、加害者が変わらなければこの問題は終わらないのだ」と痛感しました。当時、全国DVホットラインで相談を受けていたのですが、その頃は「DVを受けているんですけど、どうしたらいいですか?」という問いに「逃げてください」「別れてください」という2つの答えしかなかった。でも実際はそのアドバイスをしても、逃げられない、別れられない人が9割だったんです。もどかしい気持ちでした。 ――逃げられない、別れられない理由はなんでしょう。 栗原:「子供がいるから」「経済的自立ができない」、それから3番目くらいに「夫が変わるかもしれない」という期待を持っている人も多かったです。彼を愛しているんですね。そういう期待を捨てられず、多くの人は離婚したり、逃げたりできないんです。

ズルズルと悪化していくケースも

離婚

※写真はイメージです

――逃げなかった先で、被害者はどうなりますか? 栗原:我慢して生きていくことになります。最終的に心身ともにボロボロになり、私たちのところに逃げてきます。その頃になると、多くの被害者はDVへの防衛本能で感情離人症になっていて、悲しいとか苦しい、嬉しい、楽しいと感じなくなり、能面のようになっています。みんな無気力で、決断する力も失っているんですよね。 ――時間が解決していく、というのはあまり望めないのですね。 栗原:はい。むしろ「結婚したら治る」「子供を産んだら治る」と期待して、ズルズルと悪化していくケースも多いです。その結果、何人も子供を産んでいるような被害者もたくさんいます。しかし、加害者側を放っておいて治るケースは少ないです。一時的には良くなっても、ある程度時間が経つと爆発します。  だからこそ、被害者支援と加害者支援は両輪でなければならない。日本は被害者支援について力を入れていますが、加害者の更生は手薄です。このままだと加害者は野放しになってしまう。この問題に真剣に向き合うなら加害者更生は急務だと思っているんです。
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直接手を挙げていなくてもDVになる
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