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「もっと早く知りたかった」DVで妻を失った夫の涙。DV加害者を“治す”方法がある

面談でDV加害者の「意外な反応」

――そんな中、加害者側は最初の面談時、どのような反応をされることが多いですか? 栗原:ほとんどの加害者が、泣くんです。「もっと早く知りたかった。そうすれば、妻を失わずに済んだのに」と。 ――加害者側も、苦しんでいる。 栗原:そうなんです。加害者もまた、両親や、そして社会の被害者でもあります。 ――社会の被害者とは? 栗原:社会の中には、歪んだ価値観がたくさんあるんですね。例えば、力による支配を良しとする風潮がそうです。生徒よりも教師が上、子供よりも親が上、など、生活する中で多くの上下関係に支配されています。それから、ジェンダーバイアスもありますね。「女は家事をしなくてはならない」という社会の歪んだ価値観を学ぶことで「家事をしない女には怒っても良い」と思ってしまう。それがいかに危険な思想なのかと気づくのが、妻が家を出て行ってしまった後なんです。

DV加害者の支援プログラムとは?

ステップ

DV加害者の支援プログラムを語る、ステップの栗原理事長

――では、そんな加害者達に向け、どのようなプログラムを行うのでしょう? 栗原:オンラインで定期的に面談を行いながら、3つの学びの目標に向かっていきます。1つ目は「いかに怒りをマネジメントするか」、2つ目は「いかに思いやりを持つか」、3つ目は「いかに自分が幸せになるか」。この部分を、選択理論という考えの元に、毎週2時間、1年かけて計52回、夫婦で学んでいただきます。  選択理論とは、アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサー博士によって提唱された理論で、全ての行動は自らが選択しているという考え方です。この理論では、行動は他人や外的要因によって決まるのではなく、あくまでも自身の選択によって決まると考えられています。ステップではこの理論に基づき、自らの行動をコントロールする方法を身につけます。 ――被害者側も一緒に参加するのですね。 栗原:ほとんどの方が、夫婦で一緒にプログラムを受けています。夫婦で学ぶことで、共通目標ができます。また、先にも述べた通り、被害者側が加害者に「DVの更生プログラムを受けてほしい」と伝えることも難しいです。「夫婦で一緒に学ぼう」と伝えることも、スムーズに介入できる方法のひとつだと思っています。
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プログラムを受けて“治る”割合は?
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