「成績の悪い子ども」を怒鳴りつけ、土下座させる…“自分の人生に納得していない”親たちが抱える闇
子育てをするうえで、子どもの教育、殊に学歴や学力は誰にとっても大きな関心事だ。良い大学へ行けば良い人生を送れるというような紋切り型の盲信を続ける人は以前より減ったにせよ、親である以上は、子どもの進学先にまったく無関心でもいられない。
文京区巣鴨で阿部教育研究所を運営する阿部順子氏は、教科教育に加えてカウンセリングによって“その子にとっての幸せな受験”を実現させることに定評がある。四半世紀以上を子どもの教育に傾けていくなかで、阿部氏が感じる「親の問題」を率直に語ってもらった。
「受験の季節になると、毎年“難関校”、“御三家”という言葉がメディアを賑わせて、さもエリートのためのイベントかのように錯覚してしまいます。しかし実際には、偏差値の高低に関わらず、受験はひとりひとりにとって成長するきっかけになりえるイベントです。それはそれで意味の深いことでもあります。
ただ、私が見たかぎり『不幸になる受験のパターン』が存在します。その場合、子どもたちは親や塾講師から何重もの“呪縛”をかけられ、怯えています。親が『これくらいの偏差値の学校に入らないと人生はお先真っ暗だ』と脅しているパターンや塾講師から『良い成績をとらないと将来はろくな大人にならない』と言われているパターンなど、さまざまです。場合によっては、塾講師が保護者を煽って、子どもを苦しめるケースもあります」
塾講師は成績を上げるのが至上命題であるため、詭弁とも思われる方法で生徒を鼓舞しようと試みる者もいるようだ。
「塾講師から『原始時代は狩猟ができる人が偉かった。今は、勉強ができる人が生き残れて、いい思いをする時代なんだ。成績が悪い人間の将来なんてたかが知れている』と言われて落ち込んでいる生徒と話したことがあります。真面目な子なので真に受けてしまって、将来への希望を持てないようでした」
大人から勉強することを求められた場合、反発するタイプもいるが受け入れるタイプもいる。だが後者のなかには、如実に不調になってしまうケースもあるのだという。
「一概には言えませんが、よくみるのは腹痛、頭痛、髪の毛をむしるなどの自傷行為、頻尿などでしょうか。何らかのSOSを子どもは出していますが、キャッチできる大人ばかりではありません。まったく親が気づかず、1時間で計算問題を1題しか解けていない様子をみて『おかしい』と異変に気づいたと話す保護者もいました」
子どもの成績が不振である場合、さまざまな手段を講じて親はムチを入れるが、不適切な介入は子どもの精神を壊しかねない。具体的には、こんな事例を知っていると阿部氏は話す。
「ある子は別の塾に通っていましたが勉強に関心が向かず、成績がどんどん下がっていきました。お母様が高学歴エリートで一流商社で働く方で、お父様は派遣社員でした。家庭での発言権はお母様の方が強く、『忙しい私に代わって、この子の勉強はあなたが見なさい』と旦那様に押し付けていたようです。
ただ、成績がどんどん下がっていくのを見て、お母様は激怒され、『こんな成績では、将来は目も当てられない生活を送ることになる。うまく子どもを導けないなら、あなたとも離婚する』と言い出しました。お父様は『お前(子ども)のせいで家庭がおかしくなったんだ』と八つ当たり。子どもを怒鳴りつけ、土下座までさせたというのです」
「不幸になる受験のパターン」とは
怒鳴りつけ、土下座までさせるケースも
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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