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「貧乏に苦しむのは自分までにしたかった」“世帯年収300万円台の家庭”から東大合格した学生が“受験の意味”を語る

 最近の大学受験生は、受験を「やらなければならない面倒臭いもの」だと考えている。  これは、最近お話を伺った教師歴35年のベテラン先生の言葉です。昔は、「ここで頑張って受験して、人生を逆転させてやろう」とガツガツした受験生もいたけれど、最近はほとんどいない。  むしろ「面倒だから年内に決めたい」「行けるところに行ければいい」と、安易に年内入試、つまりは推薦・選抜入試に逃げるケースも多いのだとか。「受験のために努力する」ことが時代遅れになっているのだそうです。  そうして努力しなかった結果、偏差値が低く誰でも入れるような、所謂「Fラン大学」へ流れ着く。  大学のネームバリューが強くないのに、当人はもちろん、親も「大卒ならいい就職先があるだろう」と安易な考えで、奨学金まで借りて入学する。もちろん就職は難航し、あとには借金だけなんてケースもあるそう。  私は「そんなのは間違っている」とか「受験はもっと真剣にやるべきだ」と説教する気はありません。ただ、「自分の受験とは全然違う」とも感じます。今回は、受験期ということで、いつもとは異なりますが、私の受験生時代についてお話ししたいと思います。

東大か高卒か。限られていた選択肢

布施川天馬

布施川天馬

 まず、私の両親は2人とも親(私の父方・母方の祖父母)が事業に失敗し、夜逃げしています。母親は中2のときに夜逃げし、最終学歴は中卒。父親は大学3年のときに夜逃げしたので、学費を稼ぐためのバイトが必要となり、結果として就活ができなかったようです。  中央大学法学部を卒業したにも関わらず、僕が高校生になるまでは家族経営の小さな自営業者の手伝いをしており、収入は非常に不安定でした。小さい頃は、母親が私を連れてポスティングをしたり内職したりして生活費を稼いでいました。  中学高校は、奇跡的に近隣の学校の特待生枠が取れたので、いい成績が取れるように努力をしましたが、「どの大学に行くか」は全く考えていませんでした。でも、お金がないから私立大学には通えないし、遠くの大学だと交通費や下宿費用が嵩むから通えない。  つまり、家から通える国公立大学にしか進学できないな、と考えて調べたら、東京大学以外ありませんでした。「ああ、じゃあ東大か高卒かしか、自分には選択肢がないんだな」と考えて、東大を目指そう、となりました。  しかし現役の時にはあまりうまくいかず、1度目の受験では不合格。週3日フルタイムのバイトをしながら浪人し、もう一度東大を目指すことになります。

母親の抗がん剤治療と受験が重なった

 さらに、高校3年生の秋、現役の受験生として勉強が忙しかったある日のこと。母親が「乳がん」の診断を受けました。命に関わる病気だから、抗がん剤治療が必要で、ご家族の協力が必要です、と。  ですが私の家は貧乏で、しかも父は勤め先が倒産しかかっていたため実質無職になっており、毎日日雇いの警備員や倉庫作業のバイトで日銭を稼いでいました。ですから、私が家族の一員として母親のケアをすることになりました。  母親は抗がん剤の副作用がきつく、ほとんど歩けませんでした。片道10分の最寄り駅までの道を1時間近くかけて歩きました。当然一人では横断歩道も渡れないので、私が付き添った。  当時は現役の受験生で、3か月後には東大入試を控えていました。もちろん勉強時間は減りましたが、そんなことよりも母を一人にしておけない心配が勝りました。  またやはり抗がん剤のせいで、夜な夜な体をかきむしりながら苦しむほど、強いかゆみが全身を襲ったようでした。狭い家なので、うめき声や声にならない叫びが私の耳にも届き、私も母も、眠れない日が続いた。
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貧乏に苦しむのは自分の世代までにしたかった
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1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa

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