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「成績の悪い子ども」を怒鳴りつけ、土下座させる…“自分の人生に納得していない”親たちが抱える闇

「良かれと思ってやっている」からこそ…

阿部順子氏

阿部順子氏

 阿部氏は、成績が伸び悩んだり非行に走ったりする子どもの場合であっても、多くの場合、問題が親の側にあるのではないかと指摘する。 「自分を責めたり、凶暴になったり、集中力を欠いたり、抑圧された場合にとる子どものリアクションは個々によってさまざまですが、大切なことは、子どもが追い詰められているという事実です。そして、追い詰めているのは常に身近な大人なのです。ただ、塾講師や親の側も、子どもを苦しめようとしているのではなく、本気で子どもの将来を心配して良かれと思ってやっているケースが多く、そのことが問題をより複雑化しています

子どもが「年収400万円台」になることを懸念する親

 善意でやっていること、さらにいえば正義が自分にあると思ったときの人間の行動はときに狂気にもなり得る。そしてそんな落とし穴には、成功者ほど陥りやすいのかもしれない。 「弁護士をしているシングルマザーとそのお子さんの話です。お母様は誰もが知る名門校を卒業され、親族の8割以上が法曹という家系でした。どんなときも理詰めでお話をされ、非常に聡明なことはすぐにわかりました。ただ、お子さんは必ずしも学習に前向きではなく、それが心配の種だったようです。お子さんはご家庭ではお母様との折り合いが悪く、居心地があまりよくないからか、会話もあまりなかったようです。ただ学校では人気者で、友人も多く、人望も厚い様子でした。  私はお母様に『お子さんは今は勉強に関心が持てなくても、多くのご友人に囲まれていますし、様子をみてはいかがでしょうか』と申し上げました。しかしお母様は『私も、私の親もその上の世代も、みんな年収2000万〜3000万円くらいで生活をしてきました。このままの成績では弁護士になるのは厳しいと思います。世間では平均年収400万円台などと報道されていますから、そんな暮らしになったらどうしようと心配なんです』とおっしゃって、平行線でした」
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小言に耐えていた子どもがついに爆発…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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