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急増する“大学入試の年内化”は「貧困層だけにデメリットがある」理由。“一部の学生”だけが有利な状況に

 みなさんは2月にどんなイメージを持ちますか?私にとっては「戦いの季節」。教育に関わる人ならば、受験戦争が強く印象づいているのでは。  中学、高校、大学受験のほとんどの本番が1月後半から2月までに集中しているからです。  ただ、これももはや「古いイメージ」になりつつあることをご存じでしょうか?いわゆる「推薦入試」と呼ばれる学校推薦型・総合型選抜入試は、大抵12月までに合否が確定することから「年内入試」と呼ばれます。  もしかすると、いま30代後半より上の方からすれば「推薦入試」=「少数派」と思われるかもしれません。現実は真逆です。いまや、「テストを解いて入学する」方が、マイノリティ。
東洋大学

東洋大学は「学校推薦入試 基礎学力テスト型」を実施 竹澤宏 – stock.adobe.com

大学入学者の過半数が推薦入試に

 2022年に文部科学省が公表した「大学入学者選抜の実態の把握および分析等に関する調査研究」によれば、50.3%の過半数が推薦・総合型選抜を利用していることがあきらかになりました(学校推薦型選抜が31.0%、総合型選抜が19.3%)。  これら総合型選抜では、小論文や面接など、学力試験を伴わない様式が一般的。年内に学力試験を課す選抜を行うと、年度末までの授業によってカリキュラムを修了させる高校での授業が受験対策のため早期化する可能性があるため、文部科学省から「個別学力検査は2月1日から3月25日までに行うように」とお達しが来ているのです。  ですが、2025年度大学入試で「このルールが破られたのでは」と騒ぎが起きました。東洋大学の「学校推薦入試 基礎学力テスト型」は、12月までに試験を実施する「年内入試」でありながら、ペーパーテストを課したため。  もしもこのまま学力テストの「年内入試化」が進んだ場合、どんなことが起こるでしょうか?  少なくとも、しばらく塾に通えない貧困層の子どもたちにとって冬の時代が続くと私は考えます。ますますお金持ちを優遇する「年内入試化」の闇に迫ります。

授業のペースでは受験に臨めない理科社会

 みなさんは大学受験を志す高校生に出会ったら、どんなアドバイスをしますか?  いろいろ言うことはあるでしょうが、私なら必ず「どんなに遅くても高3の夏までに理社の勉強を終わらせなさい」と伝えます。  英数は高3までに基本事項をさらうカリキュラムを組む学校が珍しくない一方で、理社はどんなに早い学校でも高3冬まで授業が続きます。  しかし、理社の試験範囲は、高3夏の模試から教科書の全範囲になります。学校の勉強だけでは、絶対に受験についていけないのです。  そのため、映像授業や参考書などで、先取り自習を進めるように指示するのが通例。もちろん理社以外でも、新規事項の学習が早期に終わるほど受験では有利になります。  最近中学受験で中高一貫校が人気なのは、6年間一貫教育が「高2までのカリキュラム完成」を可能とするから。また、東大進学黄金ルートとして有名な鉄緑会では、なんと中学卒業までに高校卒業までの授業内容を完結させます。
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一貫校の学生がより有利な状況に
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1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa

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