更新日:2023年12月28日 09:32
お金

「カラオケまねきねこ」が繁盛する理由。“若者の心を掴んだ”立地よりも重要なポイント

客単価が1割上昇した「カラオケまねきねこ」

 コシダカのカラオケ事業、2023年8月期の営業利益率は17.2%。これは2022年8月期の8.3%を8.9ポイント、2019年8月期の12.6%を4.6ポイントも上回るもの。稼ぐ力が各段に高まりました。  実は、カラオケ事業は原価率が下がっています。2023年8月期の原価率は75.1%。2022年8月期は83.4%、2019年8月期は77.6%でした。コロナ前と比較しても2.5ポイント下がりました。  インフレによるコスト高にも関わらず原価率を抑え、利益率を高めた主要因が、客単価の引き上げ。2023年8月期の客単価は、前期と比較しておよそ1割増加しています。  強気な値上げを行いましたが、客数は前年比1%減で着地。集客にはほとんど影響がありませんでした。すなわち、値上げが消費者に受け入れられたことになります。  カラオケボックスは、価格に敏感なことで知られています。インターネットリサーチのディムスドライブの調査(「「カラオケ」に関するアンケート」)によると、カラオケ店を選ぶ際に重視するポイントで、「利用料金の安さ」は52.8%でトップ。次いで「アクセスのよさ」(42.2%)が続きます。  カラオケ店の運営会社は立地を重視しますが、消費者は料金に重きを置いているのです。  この傾向は当然、若者に顕著に出ます。中小機構の調査(「市場調査データ カラオケボックス」)では、20代男女の1回あたりのカラオケ利用額1000円未満は、全体の3割。30代から50代までだと、この金額の割合は2割ほどまで低下します。
カラオケ

カラオケ1回あたりの利用金額 ※中小機構「市場調査データ カラオケボックス」より

 そして、カラオケ利用のボリュームゾーンが20代。20代の男女で、カラオケの積極的利用意向を示している割合は55%。30代男性は、この割合が29%まで落ち込みます。  カラオケボックスの経営は、いかに若者に使ってもらうかが重要なポイントなのです。「カラオケまねきねこ」は若年層の取り込みに成功しました。

「カラオケの鉄人」よりも4割安く、持ち込みもOK

 古いデータになりますが、コシダカの2011年8月期の客単価は1184円(このころは客単価を開示していました)。「カラオケの鉄人」を運営する鉄人化計画の2013年8月期の客単価は1940円。「カラオケまねきねこ」は「カラオケの鉄人」よりも4割程度安かったことになります。  しかも、「カラオケまねきねこ」は多くの店で飲食物の持ち込みを自由にしました。そこに全室禁煙を導入。クリーンな店づくりを推進します。  コシダカという会社の強さは、料金が低かったにも関わらず、館内が清潔でサービスも行き届いていたことにあります。長年この体制を継続していたことで、確固たるブランドを構築しました。2023年8月期に入って、値上げを行っても客離れが起こらなかったのは、消費者に支持されるブランドを確立していたからだと言えるでしょう。それが、強気の値上げや出店が奏功している背景にあります。
次のページ
競合との差別化に苦しみ、事業を多角化
1
2
3
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ