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「みみっちい」国の「みみっちい」政治<著述家・菅野完>

「所詮、そんなもの」な連中

 その清和会支配構造は小泉以降、20年以上の命脈を保っている。ここまで長期間にわたってこの構造が維持されているのも、この構造が、バブルの崩壊と小泉構造改革以降に現出した日本の経済状況=下部構造に見事に適合しているからに他ならない。  バブル崩壊と小泉の「構造改革」によって現出した新たな日本の経済状況とは、公共事業と地方交付税激減のために疲弊しきった地方都市であり、特定郵便局長などの「名士」が没落する地域社会であり、非正規労働者が溢れる労働市場である。あらゆる側面で社会が縮小均衡を図ろうとする実に「みみっちい」下部構造だ。  そうであるならば上部構造も「みみっちい」ものにならざるを得ない。下部構造がそうである以上、上部構造である派閥運営も、「若い衆にパーティー券販売のノルマを課し、ノルマ超過分は若い衆の懐に入れ、親分衆はそのアガリをかすめる」という、程度の低い大学生のような「みみっちい」ものにならざるを得ないではないか。  長らく「一強」と言われていた清和会の支配とは、一皮剥けば、所詮、そんなものだったのである。当然、こんなものに、大の大人が、まともな社会人が、靡くわけがない。だからこそ彼らは「大義名分」を欲したのだ。  彼らがファナティックな「愛国論」にうつつを抜かすのも、できもしない「改憲」にこだわるのも、日本会議=生長の家原理主義運動や統一教会などのいかがわしい宗教に依拠するのも、そうとでもしなければ、「所詮、そんなもの」であることが露呈してしまうからに他ならない。程度の低い大学生のパーティーサークルが、「就活に有利」だの「自己実現」だのと標榜するのとなんら変わらない。 「幽霊の正体みたり枯れ尾花」とはまさにこのことだろう。我々はこの20年、「所詮、そんなもの」な連中が、程度の低い大学生のパーティーサークルと何ら変わらない連中が、この国を恣にすることを許してきたのだ。

我々はまた負けたのだ

 そしてさらに惜しむらくは、「所詮、そんなもの」な連中を、我々は、我々自身の手で、つまりは民主主義の力で、放逐することが叶わなかったことだ。  今我々は、官憲が「所詮、そんなもの」な連中を責め立てる様子を固唾を飲んで見守っているに過ぎない。大手メディアも本件を騒ぎたててはいるものの、実態は、検察のリークに頼る検察追随報道でお茶を濁しているに過ぎない。さらに言えば、本件疑惑を最初に暴き、昨年末から一貫して本件報道の先頭を走り続ける「赤旗」の報道内容をなぞっているに過ぎない。市民社会側も、メディア側も、自分の手で本件を総括できなかった反省を微塵も見せようとしない。  おそらく今回の騒動で、「所詮、そんなもの」な連中は消える。しかし、我々が――とりわけ言論の側が――官憲の活躍に喝采を浴びせるだけ、「赤旗」を追いかけるだけの自分たちの無力さと怠惰さに痛烈な自己批判を加えなければ、「所詮、そんなもの」な連中が消え去った後、さらに悪質で、卑小で、姑息な連中がこの国を恣にすることを再び許すことになってしまうに違いない。 <文/菅野完 初出:月刊日本2024年1月号
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月刊日本2024年1月号

【特集】岸田内閣崩壊! 検察捜査・裏金問題・安倍派没落・物価高騰・池田大作死去……
亀井静香 魂を抜かれたポチ国家の悲劇
佐藤優  自民党分裂の可能性
白井聡  検察に政権打倒を期待する愚かさ
平野貞夫 政治劣化の元凶は自公政権だ
倉重篤郎 「安倍バブル」が崩れ始めた

【特別インタビュー・対談】
古川禎久 これは自民党の危機ではない、日本の危機だ!
齋藤健  歴史を学び、危機の本質を抉り出せ
【石橋湛山生誕140年】
岸本周平 湛山を生んだ明治・大正に学ぶ
本誌編集部 石橋湛山、没後50年から生誕140年へ

【著者に聞く】
ジェレミー・リフキン 『レジリエンスの時代再野生化する地球で、人類が生き抜くための大転換 』(集英社)

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