『電波少年』を生んだ土屋敏男が“欽ちゃん”に密着して映画監督デビュー「萩本欽一はテレビの神様なんです」
11月3日から公開される映画『We Love Television?』の監督を務めた日本テレビ・シニアクリエイターの土屋敏男。かつて『進め!電波少年』で「アポなしロケ」「ヒッチハイクの旅」「懸賞生活」などさまざまな名物企画を世に送り、ドキュメント・バラエティブームを巻き起こした男が、今度は自ら師と仰ぐコメディアン・萩本欽一の6年間を追ったドキュメンタリー映画を公開。テレビの本質に迫るその創作秘話とは?
――’11年1月から欽ちゃんを追い続けておよそ丸6年。なぜ今このタイミングで公開となったのですか。
土屋:実は公開が決まったのは昨年なんです。一度、それまでに撮りためていた映像で作ったんだけど、最新の萩本欽一が欲しくなってNHK-BSのコント番組を追加で撮りにいった。そしたらこれぞ萩本欽一の本質!という映像が撮れてしまって……。そう考えると、むしろ公開は’17年の秋である今しかなかったと思います。
――萩本欽一を語る上で、“狂気”というフレーズがよく用いられますが、偶然、ニュースで見かけた小学生を番組に起用するなど、本作でもその一端が垣間見えました。
土屋:そんなの序の口ですよ。僕は欽ちゃんの前にテリー伊藤さんと出会ってますが、あの人も相当な狂気の持ち主。萩本欽一はファミリー路線に見えるけど、別の狂気ですね。
――どのような違いがありますか?
土屋:テリーさんは蜷川幸雄さんのように激昂して灰皿を飛ばしたりモノを蹴ったりするけど、欽ちゃんはそういうことはしない。ただ共通するのは2人ともテレビへの異常な愛。欽ちゃんにとっては24時間すべてがテレビを作るための時間で、プライベートはゼロ。奥さんと話をするとか、子供と何かするってことも、すべてテレビのためだと覚悟している。これもやっぱり狂気ですよね。
――土屋さんにとって、萩本欽一とはどのような存在なのでしょうか。
土屋:テレビというものを新しく定義した人。日本のテレビ界に萩本欽一がいたから今のテレビになったと言ってもいい。僕が作った『進め!電波少年』はテリーさんの『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』に影響を受けたけど、その基になっているのが萩本欽一なんです。彼は見栄晴や斎藤清六やいろんな人たちを追い込んでいき、テレビってドキュメントなんだっていうことを発見し、定義した。その意味でまさに“テレビの神様”なんです。
――本作は、土屋さんが萩本さんに「もう一度、視聴率30%バラエティを作ろう」と提案するところから幕を開けますが、その狙いは?
土屋:だいたい視聴率とか面白いものって、理屈ではなく「神様がくれる」としか言いようがない。だって、今、この瞬間だって全国のテレビマンが視聴率を取りたいと頑張っているけど、正直、取れないわけじゃないですか。けどそれは「お前のテレビへの愛情の大きさが取れる数字なんだよ」みたいな話で。意地悪で言ってるのでもなんでもなく。
――要はテレビに対する愛、だと。
土屋:例えば、今こういうのが当たっていて、コレとコレとコレをやったらまぁまぁ当たるんじゃないの、って企画立てて番組を作っても、当たったためしがないでしょう。『欽ドン!』にしたって、ラジオみたいに一般人が書いたはがきをもとに、父ちゃんがお茶の間で子供とやりとりするだけで「そんなのテレビじゃない!」って言われたものが30%を取った。つまり、「そんなもの◯◯◯じゃない」って言われたものが、次の時代を獲るんですよ。『元気が出る』にしても『電波少年』にしても。
――制作途中、盟友・坂上二郎さんの死去や東日本大震災など、さまざまなハプニングが発生します。
土屋:僕にとってああいう出来事は修羅場でもなんでもない。目の前で起きた運命にただ従っていくだけ。欽ちゃんも「あのとき、ああだったら……」とは絶対に言いませんから。
――当初はドキュメンタリーを撮っていることを萩本さんに伏せてましたが、それを伝えたときの反応は?
土屋:「そんなこと言ってなかったじゃないか。全部見せろ」などとは一切言いません。「やるって言ってるんだったらやればいい」って、それだけ。
※このインタビューは10/17発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
【土屋敏男】
’56年、静岡県生まれ。大学卒業後、日本テレビ放送網入社。現日テレラボシニアクリエイター。『進め!電波少年』『雷波少年』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』など数々のバラエティ番組に演出・プロデューサーとして携わった。
取材・文/中村裕一 撮影/尾藤能暢
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Xアカウント:@Yuichitter
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