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NHK『虎に翼』が「“F1層(20~34歳女性)”から支持される」納得の理由。朝ドラでは異例

旧来の朝ドラとは違うヒロイン像

 そもそも性別が性格の差を生むと考えること自体、間違いなのは言うまでもない。しかし、旧来の朝ドラは「女性なのに頑張ったヒロイン」や「内助の功を発揮したヒロイン」が目立った。  一方で寅子は「人として頑張っているヒロイン」。男女不平等なんて許せるはずがない若い世代は好感を抱く。寅子のモデルである故・三淵嘉子さんも「女性であるという自覚より人間であるという自覚の下に生きてきた」と自叙伝に書いている。  物語に現実味を帯びさせているところも若い世代には魅力なのではないか。1935年に直言が逮捕されたという設定の「共亜紡績事件」は1934年に発覚した「帝人事件」を下地にしている。容疑内容や逮捕者に共通点が多い。  実際の事件はときの政権を倒すために仕組まれた冤罪とされたものの、無罪判決が出るまでに約2年以上かかった。寅子や穂高教授らの法廷闘争も長引きそうだ。

テーマやイズムは現代的

 もっとも、寅子の賢母・はる(石田ゆり子)が、一足早く直言の潔白を証明した。その証拠がはるが欠かさず付けている日記だったというのは心憎かった。日記は裁判で証拠として採用されることもある。第22回のことだった。  その直前、はるが長男の直道(上川周作)に対し、猪爪家からの除籍を進言。直道はそれを受け入れようとしたが、妻の花江(森田望智)が「お母様、それは今じゃないです」と反対する。胸を突かれるシーンだった。  一時は主婦になったことを悔いていた花江だが、おそらく、はると同じく賢母になるのだろう。この朝ドラは主婦になることの幸せも否定していない。ここでも多様性を尊重している。  ドラマとしての完成度が高く、テーマやイズムは現代的。若い世代が歓迎するのはうなずける。<文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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