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「宇宙ゴミを除去する日本企業」華々しい宇宙開発に期待の一方、上場することの“危うさ”も

「開発が思うように進まなかった場合」に待ち受けているのは…

 収益認識方針にリスクを抱えているのも特徴的。  宇宙開発はマイルストーン収入がメイン。技術開発段階に応じて設置された審査会の審査結果をもって支払われるケースが多く、ミッション完了まで複数回に分けて支払いを受けることになります。マイルストーン型は将来的に期待できる収益を四半期に分割して計上するという方法をとります。  仮に何らかのミッションの契約締結が第1四半期に行われたとして、審査を経て実際に支払われるのが第4四半期だったとします。対価が10億円だったとすると、四半期ごとに2.5億円を収益として認識します。これは見かけ上のものです。  ただ、開発が思うように進まずに契約条件を満たさなかった場合、収入の一部が支払われないことも当然起こりえます。そうなると、通期の業績予想はもちろん、四半期ごとに開示する数字そのものの信頼性が揺らぐことになるでしょう。

デブリの捕獲と除去までで得られる対価は「114億円」

 また、スペースデブリの除去という難易度の高いビジネスに対して、十分な対価が得られているのかという疑問もあります。  アストロスケールは「ADRAS-J」においてJAXAと19億円の契約を結んでいました。次の大型プロジェクトとして、低軌道上の大型デブリに宇宙機を接近させ、捕獲、除去するというものがあります。契約金額は114億円。2028年4月期中に行うことを予定しています。  前例がないことに加え、高い技術力が求められ、さらに長期間にわたって行われるプロジェクトですが、契約金額は決して大きいものではありません。  一方、スペースXは衛星インターネット事業「スターリンク」が好調で、2024年度の売上高は2兆円を超えると言われています。  スペースデブリの除去というビジネスは、宇宙開発という視点だと間違いなく意義が大きいでしょう。社会的な価値は計り知れません。しかし、上場は投資家との対話が必要。常に成長することが求められます。上場することで株主からの圧力にさらされ、中核事業に集中しづらくなる可能性があります。
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「月面着陸失敗」前後で大きな明暗が…
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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