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「家を借りられない」「老人ホームにも入れない」身寄りのない“孤独な高齢者”が増加する日本を待ち受ける残酷な未来とは

身寄りのない高齢者は不安や困りごとを語らない

高齢者

写真はイメージです

身寄りのない高齢者の問題や、高齢者自身が抱える不安や不便さの実態は、なかなか見えず、伝わりづらい。メディアなどを通じて私たちが目にする情報や行政が把握している情報も、表層のみで十分ではない可能性が高い。 なぜなら、元気なうちは身寄りがなくとも不便を感じないし、不便や不安を感じるようになっても自分自身で生活が可能なうちはそれをあまり周囲に伝えず、本人が”隠す”傾向があるためだ。 実際、私が経営するシニアジョブが転職・再就職の支援を提供する高齢者の中にも、身寄りがない方は確実にいる。しかし、まだまだお仕事を続けたい高齢者は元気であるため、身寄りがないことの不安があっても表に出すことはないし、一部の大企業でない限り就職に保証人が必要なこともないため、私たちも身寄りについて掘り下げることはない。 テレビや新聞などのメディアからの「“おひとりさま”のシニアを取材したい」といった取材依頼も、私たちはしばしばいただく。 もちろん、独居や身寄りのない高齢者で、取材を受けてくれる方もいるにはいる。しかし、取材を受けてくれる高齢者は基本的に、身寄りがなくとも現時点で自立した生活ができていて、収入や貯蓄に余裕のある方だ。メディアが「身寄りがないことで不安や、実際の困りごとを抱えた方を取材したい」と希望しても、そうした方はそもそもそうした話をオープンにせず、取材も断る方が多い。

身元保証がないと老人ホームへの入居も困難に

では最後に、身寄りがないことで高齢者が実際に直面する大変な場面にはどのようなものがあるのかと、それを解決するための身元保証のサービスを巡る問題について紹介する。 先にも述べた通り、身寄りがないことは「困った時に助けてもらえない・頼れない」ということだけでなく、保証人を立てられないことで様々な不便が生じる。つまり「何かが起きた時」だけでなく、その前の準備や一時的な対応でも困る場面が出てくる。 例えば、賃貸住宅や老人ホームへの入居や、病院での入院・手術などの場面だ。保証とは本人が支払えなかった債務を支払う責任を他の人に担ってもらうことを言うが、老人ホームなどの場合、支払いだけなく入居者本人が亡くなった際や緊急時の対応を行う目的でも、保証人が必要とされることが多い。 つまり、高齢者本人に判断力や支払い能力があっても、身寄りがなく保証人が立てられないことで、老人ホームへの入居や、病院での入院や手術がスムーズにいかない場合がある。 こうした身寄りのない高齢者を助けるサービスが、身元保証サービスというものだ。若い方でも最近は賃貸住宅への入居で保証人が必要なくなり、保証会社に保証料を払うことが増えているが、それと似たようなものである。 ただし、高齢者向けの身元保証サービスの場合、亡くなった後の手続きや財産の管理なども含むことが多く、複雑だ。いくつもの法律と専門分野に跨る内容のために、監督省庁がなく、弁護士や社会福祉士といった専門職もすべてを一人でカバーできるわけではない。さらに専門職に依頼するとその分、費用が高額になるという問題もある。費用が高額で、医療や介護、財産といった重要な問題にも関与することでトラブルの発生も増えている。 政府も孤独・孤立対策推進本部を立ち上げ、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」の案を出している。しかし、まだ具体的な取り組みは道半ばという状況だ。 現時点で身寄りのない人ができる対策は、高額な身元保証サービスを利用できる資金を蓄え、自身の判断力が衰える前に、将来、身元保証サービスがスムーズに受けられる準備を整えることぐらいしかない。とはいえ、政府の対策も加速しており、自治体独自の取り組みがある場合もあるので、お住まいの自治体に確認してみるのもいいだろう。
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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