更新日:2024年07月04日 15:43
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JRが“リニア開業”より“夜行列車の復活”を優先すべき理由「廃止が相次いだ当時と状況が大きく異なる」

「アクセスがよくない」高山市がさらに伸びる可能性も

 ここで一つ“夜行列車需要”が高く見込めるエリアの例を出そう。  リニアで注目を集めたJR東海の営業エリアの中にも大きなインバウンド需要を生んでいる地域ーー岐阜県の高山市だ。  コロナ禍前には年間約473万人の観光客が訪れており、そのうち約61万人が外国人観光客だった。これは、人口(8万人強)の約7倍にあたる数字だ。現在はさらに多くの人が訪れている可能性も高い。    しかし、現状ではアクセスに優れているとは言い難い。東京駅からは新幹線から名古屋で在来線に乗り継ぎ、約4時間30分かかる。  だが、高山を訪れたい外国人観光客は少なくない。事実、以前筆者が特急ひだに乗車して高山を訪れた際は車内は日本人より外国人乗客の方が圧倒的に多いという状態だった。  となると、夜行列車1本で目的地に向かえるとするならば、その地域を訪れる外国人観光客は増える見込みがあるということである。

品川22:30発、高山6:30着の列車が通れば…

 高山市の例のように、夜行列車が運行すれば、現状ではアクセスに難のあるエリアにも外国人訪問者が足を運ぶチャンスを増やせる。そうなると、まだ見ぬ日本の名所に足を運ぶようになるのではないだろうか。    また、夜行列車を利用すればホテル代が節約できることはもちろん、時間を有効活用することでより多くの街を回ることができる。  たとえば、東京を出て、名古屋で高山(岐阜)方面と同じく外国人観光客が多く訪れる京都を経由し、奈良に向かう列車と分離する多層建て夜行列車を通すとしよう。  相応の速度で在来線を走らせた場合、東京-高山、東京-京都ー奈良も8時間となる。東京駅は車両を長時間留置できないので、ホームに余裕のある品川始終着で設定した場合、時刻表は下記のようになる。 【下り】 品川22:30発→高山6:30着、奈良6:30着  下りの品川駅では20:00くらいから車両を停めておき、奈良は9:00くらいまで停めておき、好きなタイミングで乗車・下車できるようにする。この理由は後述する。 【上り】 高山22:30発、奈良22:30発、京都23:30発。品川6:30着  高山・奈良は20:00くらいから、品川は9:00くらいまで停めておき、好きなタイミングで乗車・下車できるようにする。  ホームに長時間留置して好きなタイミングで乗車・下車できるようにする理由は、出かけるタイミングを乗客に自由に決めてもらうためだ。特にホテル代わりに夜行列車を利用する外国人観光客や子供連れを中心に重宝されるだろう。このようなサービスは海外の夜行列車に多く見られる。
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ヨーロッパで夜行列車の需要が回復している理由
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EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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