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報われない恋に悩み、AIで官能小説を書こうとしたおっさんの試行錯誤

竹下の力作「メビウスの輪」の読み応え

hageIMGL0503_TP_V タイトルからしてなかなかパンチが効いてるな。官能小説とメビウスがなかなか繋がらないけれども、興味は惹かれる。なんとか読み始めてみる。  いつものようにスナックで二人っきりの竹下さんとママ。ママがグラスの水滴を拭き取りながら、ふいに言葉を発する。 「もう夏ね」  竹下さんは笑った。 「まだ梅雨さ。梅雨前線よ」  ママはクスリと笑った。思えばいつも同じような会話を繰り返している。 「今日はもう店じまいにしちゃおっか」  竹下さんはそっとグラスを傾けながら応える。 「俺も男として店じまいよ」  ちょっと意味が分からないのだけど、どうもこの冒頭のシーンから気に入らないらしい。

ダメ元で生成AIで修正をかけてみた

 竹下さんいわく、エロさが足りないらしいのだ。いや、いくら官能小説といっても冒頭からエロさは必要ないんじゃないかと思うけど、竹下さんいわく、出だしが勝負らしい。出だしがエロくない官能小説はゴミとまで言い切りやがった。 「それでさ、ほら、前にやった生成AIあるじゃん。あれでこの冒頭の文をエロくして欲しい」  竹下さんは生成AIを万能だと思い込んでいる。前回、生成AIで作り込んだラブレターがどんどんおかしな方向に展開し、戦国武将の話になったというのに、それでもまだ生成AI万能説を信じて疑っていないのだ。 「お言葉ですが竹下さん、生成AIはエロには対応していないですよ。やろうとしたらすごく怒られます。僕もう嫌ですよ、生成AIに怒られるの」  竹下さんからの要求を生成AIに入力するとたいてい怒られる。ああいう無機質な存在に怒られるとけっこう心にくるものがあるのだ。 「そういわずにさ、ダメもとでやってみてよ」 「絶対に怒られると思いますよ」 仕方なしにパソコンを開き、生成AIに上記の竹下さんの文章を入力し、これをもっとエロくしてくれと頼みこむ。  もちろん、エロく変えてみますね。
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妖艶な笑みを浮かべてしまう竹下さん
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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