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報われない恋に悩み、AIで官能小説を書こうとしたおっさんの試行錯誤

もうAIのふりをして僕が書くことにした

 竹下さんの要求は、これを官能的な文章にすることなのだけど、それはもうはっきりと規約違反であると断言されている。どうせこれも怒られる。  しかも、ただ怒られるだけならいいけど、あまりそれを繰り返していると、おそらく僕のアカウントごとブラックリスト入りしてしまう。アクセス禁止とかにされるかもしれない。さすがにそれは避けたい。 「はやく官能的にしてくれよ」  けれども竹下さんの圧もものすごい。そこで導き出した僕の結論は、「生成AIが作ったことにして即興で僕が文章を作る」だ。  竹下さんはたぶん騙されていることに気が付かないし、何度も宣伝させてもらって悪いけど、文章術の本を出版した僕なら即興で遜色ない文章を作れるはずだ。  ということで、生成AIにぶち込んだふりをして好き勝手に竹下さんの官能小説を改造することにした。 「入力しました。あ、でましたね」

やはり人力ではさらに生々しく、酷くなってしまった

<スコッチの塩味をママにたとえるのはあまり官能的とはいえません。以下のような表現はどうでしょうか。> ————————————————— 「すげえ、スコッチの瓶も丸飲みじゃねえか」 「アヒィ」  万力のように締め上げる。スコッチの瓶は熱したビードロのように簡単にひしゃげた。その光景に竹下は息をのむ。シングルモルト。 —————————————————  さらにひどくなった。 「けっこういいな」  もう竹下の判定基準がわからん。ほんとうにこれをいいと思っているのか。 「あともういっこ、気になるところがあるんだよな。そこだけ直してほしい」 —————————————————  薄茶色の魅惑的な突起を舐める。左から舐める。 「あん!」  続いて右の魅惑的な突起を舐める。 —————————————————  どうでもいいわ。  左右どっちから舐めてもいいだろと思うのだけど、竹下的にはこのシーンは最重要で、もっと官能的な表現にしてほしいらしい。
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「なんかL'Arc〜en〜Cielみたいになってるけど」
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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