更新日:2024年07月18日 16:07
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スタバのような“強力なファン”不在の「ドトールとサンマルク」。両社の明暗を分けた“意外な要素”とは

「売上高が1.4倍に拡大した」サンマルク

サンマルク

サンマルク 既存店売上高・客数 ※月次報告書と決算説明資料をもとに筆者作成

 サンマルクから見てみましょう。  2019年度の既存店の売上高、客数を100とした場合の各年度の推移です。既存店はオープンから一定期間をおいた店舗のことを示します。新規オープン効果がないために、店舗の本質的な集客効果が分かります。2023年度の客数はコロナ前の8割ほどしか回復していません。しかし、売上高はおよそ1.4倍に上昇しています。つまり、客単価が上がったのです。  サンマルクは2023年6月、9月に価格改定を実施しています。2017年のブレンドコーヒーSサイズの価格は200円でした。現在は300円。  サンマルクには、単純に価格を上げるだけではない強みがあります。「チョコクロ」をはじめとしたパンやサンドイッチ、パスタ、デザートなどの豊富なメニューがあるため。新商品の開発やセットメニューで客単価を引き上げられる素地を持っているのです。  サンマルクは巧みに客単価を引き上げ、客数が戻り切らない厳しい現状をカバーしています。

客数は9割近くまで回復したドトール

ドトール

ドトール 既存店売上高・客数※月次報告書をもとに筆者作成

 同じくドトールも客数は戻り切ってはいません。しかし、2019年度を100とすると、2023年度は89まで回復しています。しかし、売上は115。1.4倍近くまで増加していたサンマルクとは大きな開きがあります。つまり客単価の上昇が抑制されているのです。  ドトールがドリンクの値上げをしたのは2022年12月。ブレンドコーヒーのSサイズは224円から250円となりました。わずかな価格改定に留めています。  2023年度の客数は2019年度比で9割近くまで回復しており、値上げが集客には大きく影響していないことが分かります。  サンマルクはドトールよりも客数の回復が遅れている一方で、価格改定効果が大きく、売上高を大幅に伸ばすことができました。ドトールはその反対で売上の回復ペースは緩やかなものの、客数はかつてと近いところまで戻しています。  2社を比較すると、ドトールの方が将来的な値上げ余地が残されているように見えます。コーヒーの単価は依然として安く、客数の回復が順調であるためです。
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フランチャイズ加盟店への配慮が必要な難しいビジネス
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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