朝さんぽを習慣化できるアプリ「あさひにっき」
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メンタルケアやストレスコントロール、パフォーマンスU Pに効果がある「朝さんぽ」。朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、幸せホルモン「セロトニン」やメンタルサポートに働くビタミンDが活性化。セロトニンは日が落ちると睡眠ホルモン「メラトニン」に変化するため睡眠の改善も期待できるーーと、朝さんぽはいいこと尽くめ。
ただ、唯一にして最大の難点が、「朝、起きるのがしんどい」ということだろう。セロトニンだの、ビタミンDだの言われなくても、朝、さんぽに出かけたら清々しい気持ちになることはわかっている。わかっているけれど、朝、ベッドから出る、ただそのハードルが高いのだ。
しかし、そんな大問題を解決するソリューションがある。スマホアプリ『あさひにっき』だ。
このアプリ、日の出から9時45分までの間に立ち上げてさんぽに出かけると、歩いた時間や距離が自動で記録される。S N S機能もあり、さんぽ中の風景や草花を撮影してコメントをつけて投稿すれば、見てくれた人から「ハート」が送られる。
アプリ「あさひにっき」より
フォロワーの日記を見ることもでき、同じ空の下、同じ時間に自分と同じように歩いている人がいるのだな〜と実感。見えないつながりも、朝、起きるモチベーションになるというわけ。
また、朝さんぽしたり、にっきを投稿したり、アプリの機能を活用するとGEMというポイントが貯まる。そのポイントは、アプリ登録時に設定する自分の守護生物「ソーラ」のアイテムと交換でき、自分だけの「ソーラ」としてカスタマイズすることができる。
このように、『あさひにっき』は記録×SNS機能×ゲーム要素と、朝さんぽを楽しみながら習慣化できる仕掛けが満載なのだが……このアプリが普通のお散歩アプリや日記アプリと一線を画すのは「メンタルチェックテスト」の存在だ。
メンタルチェックテストの狙いとは? 監修した医師を直撃
アプリ「あさひにっき」より
アプリの右上のアイコンをタップするとメンタルチェックテストの画面が現れる。30項目ほどの質問に選択肢で回答していくと、病気の可能性や気質が診断される。テストは1か月に1度、受けることができ、その結果もアプリ内に記録されていく。
「うつ病は几帳面な人がなりやすい、というイメージがあると思います。そのあたりも踏まえて、点数の配点バランスを考慮。専門家の間で検討しつつ、実際に患者さんへの臨床研究もくりかえし開発しました」
そう話すのは筑波大学名誉教授・お茶の水メモリークリニック院長の朝田隆先生。筑波大学医学と共同で『あさひにっき』の医療監修/技術提供を務めた朝田先生に、メンタルチェックテストの狙いと目的を聞いた。
メモリークリニックお茶の水・朝田隆院長
「2015年12月から常時、50人以上が働いている企業にストレスチェックが義務化されました。でも、個人的にはその効果に疑問を抱いていました。ストレスチェックで労働者のストレスの程度を把握し、職場環境の改善につなげるというけれど、その結果は本人に正しく還元されるのか? 会社はちゃんとサポートしてくれるのか? そもそも、会社に提出するものとなれば、真面目に正直に応える人ばかりとも限りませんよね」
確かに、会社で行うストレスチェックは、なんていうか“義務”だし、「高ストレス」と診断されても「そりゃそうだよな」と思う程度。でも、普段使っているアプリに入っているテストであれば、素直に飾らず正直に答えることができるだろう。でも、ストレスチェックと『あさひにっき』のメンタルチェックテストは何が違うのか?
「ストレスチェックはうつ病予防に着目したテストです。ただ、うつの症状が出ているからといって全員、うつ病というわけではありません。女性であれば生理前から不調が続く月経前症候群(PMS)が原因で気持ちが落ち込むという人は少なくありませんし、アルコール依存症も抑うつ状態が見られます。また、私は軽度認知症(MCI)が専門ですが、うつと軽度認知障害も合併しやすい。気分の落ち込みや不安といった抑うつ症状の原因はさまざま。症状だけ見ても、解決にはつなげられません。幅広く、その人の状態やそもそもの気質を把握することが必要で、我々はそれを目指したのです」
メンタルチェックテストの目的は「己を知ること」
メンタルチェックテストの結果は「キツネのように新しい場面では過敏になりがち」「探究心を持ちつつ、ハチドリのように感覚過敏」「サルのように集団の中で自分を意識しつつ、物事を解決しようとする」など動物で示される。
アプリ「あさひにっき」より。メンタルチェックテストの結果は動物で示される
占い感覚の楽しさはあるけれど、このメンタルチェックテストがベースにしているのは、米国精神医学会による「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)」。世界で用いられているメンタル不調の診断分類だ。
「眠れない」「落ち込む」といったその人の「状態」に関する質問に加え、「怒りっぽい」「気分に波がある」といった、その人がもって生まれた「人となり」についても質問。うつ病だけではなく、ほかの疾病の可能性や本人の気質までを、医師の主観でなく、データにのっとって診断・分類される。
「状態についての指標をステートマーカー(State marker)、気質についての指標をトレイトマーカー(Trait marker)と言います。朝さんぽを続けていると、眠れない、気持ちが沈みがちといった『状態』の部分、ステートマーカーは改善していくでしょう。一方で、『気質』や『人となり』を示すトレイトマーカーは変わることはありません。なんでも良くなるわけではないということは大前提として理解していただきたいのですが、変わらないからダメということではなく、『己を知る』ことが重要なのです」
変わらない気質を変えようと努力しても効果は出ない。努力しても変わらなければ、「自分はやっぱりダメなんだ」と自己嫌悪に陥り、負の連鎖にハマってしまう。
「それこそが大問題」と朝田先生。『己を知る』ことが心の健康の第一歩であり、このテストはそうした理念で開発されたのだ。
「たとえば、自分が怒りっぽい気質を持っていたとしても、それを知っていれば、『あいつのせいで!』と他者を必要以上に責めることはなくなるでしょう。また、イラッとした時、感情をマネジメントすることができるかもしれない。自分の苦手や弱点がわかれば、職場や対人関係でどうふるまうか、順応していくための術を考えることができるし、会社側も具体的なサポートができる。結果、働きやすい環境になっていくはずです」
“心がズキンとする曲”を朝さんぽのBGMに
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朝、目が覚めたら外に出て、朝日を浴びながら歩く。空の色や木々の緑を見ながら、心動いたものをカメラに収め、仲間と共有する——そんな生活リズムを作り、メンタルヘルスチェックで己を知って、無用なトラブルを回避してできるだけ穏やかに過ごす。
そんな好循環を生み出すのが『あさひにっき』なのだ。成果が出てくれば、やる気も出てくる。朝さんぽのほか、メンタルヘルスケアにいいことはないのだろうか?
「睡眠はとても重要で、寝る時間に向かってリラックスするのが大事。そこでぜひ、試してもらいたいのが、『2:6』の呼吸法です。鼻からゆっくり2秒かけて吸って、お腹を膨らませたら、口からゆっくり6秒かけて吐き、お腹を凹ませます。腹部と胸部を仕切る横隔膜を動かす腹式呼吸で行うのがポイントです。横隔膜には副交感神経の一つである迷走神経がたくさん存在していますので、腹式呼吸によって意図的に副交感神経が優位の状態を作ることができるんです。これを眠る前の儀式として行うのがおすすめです」
また、睡眠の改善のため、現在、朝田先生たちのグループは眠りに効く音楽も研究中だとか。
「眠りに誘うヒーリングミュージックのようなものではなく、『寝よう』という動機づけになる曲を見つけたいと考えています。たとえば、子どもの頃、外で遊んでいて、童謡『夕焼け小焼け』が流れてくると家に帰らなきゃと思いましたよね。音楽は行動のきっかけになるんです。パチパチと鳴る焚き火の音や川のせせらぎなどのような、音の波長の中に乱れがあるものから見つかるのではないかと考えています」
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音楽とメンタルはどうやら関係が深いようで、覚醒を促したい朝は「心がズキンとする曲」を聴くのがいいのだとか。
「『心がズキンとする曲』とは、アイデンティティが形成される頃に聴いていた曲のことを言います。たとえば、初めての体験をしたときに聴いた曲、初めて上京したときに聞いた曲、恋人と初めてキスしたときに街で流れていた曲などのことです。こうした曲を聴くと、交感神経が優位になることがわかっているんです」
確かに、10代の頃に聞いた曲や、思い出と結びついている曲は心が動くけれど、それが交感神経の活性につながっているとは⁉ 「心がズキンとする曲」が交感神経を活性化させるのであれば、朝さんぽのB G Mは「思い出の青春メドレー」がいいのかも。
「開発者の一人として『あさひにっき』を活用して、ぜひ、朝さんぽを生活の中に取り入れていただきたいと思っています。ただ、朝さんぽができない日もあるでしょう。その時、自分を責めないでください。先ほども指摘しましたが、失敗や自己嫌悪に陥るような行為を繰り返すのは良くありません。大切なのは30%でもいいから習慣を継続することです。朝寝坊したら夕日を見るのでもいい。散歩ができなくても、カーテンを開けて日光を浴びるのでもいい。100%完璧に行うのではなく、細く長く続けることを意識してください」
<取材・文/日刊SPA!取材班 提供/イーガイア>