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フィリピンの水上スラムで“救われた”28歳男性の恩返し。今では「日本人を歓迎してくれる環境」に

久しぶりに訪れたバジャウ村の状況に「ショックでした」

バジャウ村

バジャウ族の家で居候するけいすけさん(写真右)

 バジャウ族の魅力について、「見返りなしで、優しくしてくれるところ。笑顔で話しかけてくれて、お金ないのに、『ご飯食べるか?』って。ギブアンドテイクじゃなくてギブアンドギブなんです」と話す。  大学卒業後は、デジタルマーケティング会社に就職。3年勤めて退職し、再びバジャウ村を訪れたとき、危機感を覚えた。 「コロナ禍でセブ島に行けなかったので、居候させてくれた家族と3年ぶりに再会したのですが、物価の高騰やコロナの影響もあり、金銭面では前よりも苦しい印象を受けてショックでした」  何かお金を生み出せるサービスを作らなくは。それから、けいすけさんはヒアリングを始めた。どういう仕事があるのか。どうすれば収入を増やせるのか。 「彼らはルーツが海にあるので、船を作るのに長けていることがわかりました。でも、材料費がなくて作れない。ならば、僕が費用を出すから、船を作って売ろうよと。船を3隻作って、セブ島周辺の48島にどぶ板営業で回って売りました」

フィリピン人は「給料日に全部使っちゃう」

バジャウ村

両端にある羽のようなつくりが特徴のバンカーボート。フィリピンの典型的な船

「次に取り組んだのがツアーです。毎週バックパッカーや留学生の生徒を集めて、バジャウ族との交流を兼ねて、村を感じてもらう内容です。村の案内だけでなく、一緒に船に乗って伝統的な道具を使った漁の見学や体験もしてもらいました。バジャウ族が使うフィンはベニヤ板やトイレの蓋、水中銃のモリは傘の骨でできているんですよ」
バジャウ村

バンカーボートに乗って海へ向かうツアーの様子

 しかし、言語や文化の壁はさることながら、金銭感覚や労働意欲も異なる。ましてやスラム街の人を雇うのは並大抵のことではない。 「フィリピン人は、つい目の前のことに囚われてしまう国民性があり、給料日があると、その日に全部使っちゃうんです。フィリピンでは、給料日が月に2回あるのも、そういう理由だと言われています。そのうえ、バジャウ族はお酒もよく飲むので、『今週分の給料だよ』と渡しているのに、その瞬間に半分はお酒でなくなる。『それを家族のご飯に使ったらどう?』って聞いても、笑って流されちゃうんです。収入を増やそうとしているのに、正直モチベーションが下がることもありました。でも、お金があまりない彼らは外に遊びに行くことも中々できないし、お酒を飲んで仲間同士でワイワイするのが娯楽だから仕方ないと、考えるようにしました(笑)」
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企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_

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