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「“汚くて物乞いする下等民族”の偏見なくしたい」フィリピン水上スラムで暮らす日本人男性の波乱万丈

フィリピン・セブ島の水上スラムに、外国人で唯一住むことを許された日本人」と、さまざまなメディアで取り上げられてきた人物がいる。松田大夢さん(28歳)だ。彼は7年もの間、セブ島の少数民族「バジャウ族」とともに暮らしてきた。  フィリピン国内で“最貧困部族”と忌み嫌われているバジャウ族のために、イメージアップ活動を行ってきた大夢さん。しかしコロナ禍を経て、このたび日本に拠点を移すことを決めたという。  彼はなぜ、日本では知られていなかった少数民族の力になろうと思ったのか。そしてなぜ、村から離れる決心をしたのだろうか。

海外に憧れをもち、ピグミー族になりたかった

松田大夢

松田大夢さん/X:@chilichilihot/Instagram:@hiromu_matsuda(※提供写真、以下同)

 大夢さんは1995年、新潟県村上市に生まれた。小学生の頃から自然が好きで、少数民族のシンプルな暮らしに憧れていたそうだ。 「海外に漠然とした憧れがあってさ。小学校の文集にも、『ピグミー族(※中央アフリカの赤道付近の熱帯雨林に住む狩猟採集民)になって、狩りをしたり楽器を弾いたりして暮らしたい』って書いていたな」  中学を卒業後、地元を離れて佐渡の高校に進学。祖母宅に住みながら農作業を手伝いつつ、学校をサボって海外を放浪するようになる。
カンボジア

カンボジアの中学校にて。孤児院に寝泊まりしながら、勝手に通っていたそうだ

「親に『学校に行け、〇〇しろ』って強いられる感覚が鬱陶しくなって、実家を出たいなって思ったんだ。学校から帰ったらおばあちゃんのリンゴ畑を手伝って、そのバイト代でタイやカンボジアをふらふらしていた」  バックパッカーとして東南アジアのストリートを見て回り、カンボジアでは孤児院も訪問した。海外の価値観に触れた彼は、日本の学校教育のあり方に違和感を持つようになる。

卒業三日前に高校を中退

松田大夢

学生時代

「昔からよく怒られる子供だったんだけど、説得力があって納得させてくれる先生に出会えなかったんだよね。高校でもそうだった。『ルールだからやめなさい』って、一言で片づける先生ばっかりで。その言葉を使うのは教育者としてナシでしょって、海外に出たことでより強く思うようになった」  教師に対する不信感が強まるとともに、クラスメイトにも疑問を抱くようになった。 「周りは先生の言うことに従って、進学だったり就職だったり社会のレールに縛られて。能動的に生きている人が少ない気がしたんだよね。やりたいことをやっている人がいないって、違和感しかなかった。『オラついた教師に従って、高校卒業って履歴が付くのが恥ずかしい』って思うようになって、卒業式の三日前に辞めたんだ」  大反対を食らうかと思いきや、「大夢に常識を言っても通用しないから」「海外に行ったらそうなると思っていた」と、周りはしぶしぶ受け入れてくれたという。  高校を辞めて地元に戻った大夢さんは、“面白さ”を求めて上京を決意する。
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東京でホームレス生活
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

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