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フィリピンの水上スラムで“救われた”28歳男性の恩返し。今では「日本人を歓迎してくれる環境」に

ゲストハウス運営を「基盤となるビジネス」に

 事業を模索していくなかで、基盤となるビジネスにたどり着く。 「村の人には『ずっとこのまま住ないか』と言われもしたんですが、セブ島滞在後は、他国で暮らすことが決まっていましたし、そもそも民族の村のなかで日本人が暮らすのは、長い目で見て現実的ではないと思っていました。ただ、セブ島から離れても、できる限り彼らをサポートしたい思い、バジャウ族の友人や村長と話すなかで、バジャウ族運営によるゲストハウスを開くことを決めました」  村長と村民と話し合いを重ね、けいすけさんが不在でも回せるように、運営の仕組みを練った。クラウドファンディングで集めた35万6000円と自己資金を合わせ、約100万円かけて、昨年10月からゲストハウスの運営をスタートさせた。  ゲストハウスは、伝統的な水上住宅に、個室とドミトリーの部屋を設け、冷蔵庫や簡易キッチンもある。村で唯一の洋式トイレや防犯カメラも設置し、衛生面や安全面にはこだわった。

双方にとってプラスになる仕組みを作った

バジャウ村

ハンモックやリクライニングチェアもあるので、バジャウ村に流れるゆっくりとした時間を楽しむのもおすすめだとか

宿泊スペースだけでなく、コミュニティスペースを設けたのには、わけがあった。 「村には一応、入村料300ペソ(日本円で約800円)の仕組みがあるんですよ。でも、訪問者が来たとしても誰も彼らを案内をしないんです。せっかく日本人がきてもウロウロして終わりになっていて、機会損失だと感じていました。そこで、休憩場のような場をつくることで、入村料の案内をスムーズにしました。訪問者にとっても、宿泊せずとも、バジャウ族と交流できたり、モリやゴーグルなどの道具を目にすることができて、充実した体験ができます」 「コミュニケーションが取れる場所」の波及効果は大きいという。 「商売の機会になるんです。バジャウ族の仕事の一つに、真珠やアクセサリー、バジャウパンツと呼ばれる衣服の販売があります。基本的には観光地に出向いて路上で売ってるんですけど、いきなり道端で言われても抵抗あるじゃないですか。でも、こうしたコミュニケーションが取れる場所があれば、真珠を売るきっかけができる。訪問者が交流ができて、バジャウ族も収入をえられるような場所があれば、お互いにとっていいなと」
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初期投資の回収は「6ヶ月〜12ヶ月以内に立つ見込み」
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企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_

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