デビュー5周年の区切りを目前に控えるハロー!プロジェクト所属のアイドルグループ・BEYOOOOONDSが世界最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL 2024 supported by にしたんクリニック」(以下、TIF2024)の初日に登場し、高い歌唱力と圧倒的なダンスパフォーマンスをお台場の地で見せつけた。
朝から強い日差しが照りつけるお台場・青海周辺エリアにて今年も開催されたTIF2024。気温が最も高くなる昼下がりの時間、フジテレビ湾岸スタジオの屋上に設置された開放的なSKY STAGEにて、「最もこのステージにふさわしい時間ではないでしょうか」と会場アナウンスが入ると、ファンたちからはメンバーを呼ぶコールが自然と湧き起こった。そのまま広大な青空を背に、それぞれのメンバーカラーを鮮やかにあしらった衣装を身につけたBEYOOOOONDSがさっそうと登場した。
メンバーたちがそれぞれの立ち位置につくと、間髪入れずにイントロが流れ、5月29日に発売したトリプルA面シングル「灰toダイヤモンド/Go City Go/フックの法則」から「灰toダイヤモンド」を披露。日本レコード協会による2024年6月度のゴールドディスクにも認定された5thシングル3曲のなかでもファンへのお披露目が最も早かったこの曲は、ライブ冒頭に盛り上がる曲としてすでに定着しつつあり、一曲目からファンたちは思い思いにコールを入れたり手を叩いてクラップしたりして盛り上がった。
「ダブル主旋律で4声コーラス」という、メンバーたちからも史上最高難易度の楽曲」と語る曲に挑戦している同曲だが、その難しさをまったく感じさせず、野外のステージでもしっかり会場の後方まで美しいハーモニーを届けた。
また、歌唱のみならず振付でもダンサーのえんどぅ氏を起用し、コミカルさがありつつもキレのある難易度の高いダンスに挑戦している同曲だが、炎天下のステージながら誰ひとりとしてまったく手を緩めることなく指先まできれいに揃ったダンスを披露。サビでは「ダイヤモンド ダイヤモンド」という歌詞にあわせてメンバーが「ダイヤモンドポーズ」を披露すると、それを真似してファンたちも両手の人指し指と中指でダイヤモンドをつくって掲げ、メンバーたちと一体になって全身で楽しんだ。終盤に差し掛かり西田汐里が「フェイク」を披露すると会場からも大きな歓声が起こり、続いて高瀬くるみが新しく挑戦したと語る長めのフェイクを披露すると、ステージを右に左に動きながら観客を煽った。
高まる会場の熱気
一曲目が終わるとMCの時間となり高瀬くるみから、メンバーの平井美葉が足の怪我の影響で座ってのパフォーマンスになることが告げられる。加えて、BEYOOOOONDSにとって初めてのSKY STAGEであることに触れ、「みんなと一緒に熱いライブにすることを楽しみにしてきたので最後まで一緒に盛り上がっていきましょう!」と呼びかけると、平井美葉が「続いてはこちらの曲!」と曲振り。その合図にあわせるようにトリプルA面シングルの新曲から「フックの法則」のイントロが会場に流れた。4枚目のシングル曲「求めよ…運命の旅人算」に続く「お勉強ソング」ともいえる一曲だ。
会場からは「やったー!」という声が上がる一方で、BEYOOOOONDSらしく曲の冒頭から平井美葉による「講義」が厳かに始まり、イギリスの物理学者ロバート・フックによって発見された物理法則であることが紹介される。そしてメンバー全員で「力は伸びに比例する!」と「フックの法則」の要点を歌うのを合図に、曲調もアップテンポに。アップテンポになったかと思うと、途中、島倉りかによる「ときどき ひとり」という歌詞でしっとり聴かせるなど、メンバーの特徴にあわせながら一曲のなかでも振り幅の大きい展開を見せてファンたちを魅了した。
サビになると縦に横にとバネの「伸び」を模したような振り付けを見せ、息もつかせぬ間にダンススキルの高さを再度見せつける。サビでは「F=kx」というこれまた「フックの法則」の方程式がそのまま歌詞になったパートがあり、両腕や足を使いながら「F」「k」「x」の文字に寄せた決めポーズをメンバーがすると、ファンも一緒にポーズを決めて楽しんだ。間奏に入るとファンの盛り上がりは一段と高まり、メンバーたちの歌声と一糸乱れぬ掛け合いで「オイ!オイ!オイ!」「フッ!」などと叫び、会場の熱気はどんどん高まっていった。
そのまま勢いのある曲でラストも締めるのかと思いきや、最後の曲となる3曲目は「恋する銀河」を披露。雄大な音楽と世界観が魅力的な一曲は、炎天下のなかで涼しささえ感じさせ、むしろこのステージにおいてはじつに「うまい」選曲だった。小林萌花や前田こころ、平井美葉や里吉うたのらがしっとりと聴かせるパートでは、まるで時間が止まったかのようにそれまで大盛り上がりを見せていたファンたちが聞き入った。しかしこれで終わらないのがBEYOOOOONDS。清野桃々姫と西田汐里がそれぞれ担当している「あなたが好きよ」という歌唱パートになると、ファンたちが「あなた」の部分をメンバー名に変えて「も・も・ひが好きよ!」「し・お・りが好きよ!」と大声で叫び、どこまでも続いていくだろう青空にこれでもかと響かせた。
3曲を歌い終わると高瀬くるみから、その後出演するステージの案内と「お水いっぱい飲んでくださいね」と熱中症に備えた水分補給の呼びかけがなされ、彼女たちはステージを後にした。こうしてBEYOOOOONDSによる初めてのSKY STAGEでの15分が、あっという間に幕を閉じた。
小林萌花のピアノ、清野桃々姫のトークボックス、岡村美波のDJ、昭和歌謡と恐竜が好きだという島倉りかや声優業もこなす高瀬くるみなど、「個性的なグループ」と評されることの多いBEYOOOOONDS。そんな彼女たちにとってこの1年は変化の大きい1年だった。体調不良で活動を休止していた一岡伶奈が今年に入って卒業すると、続けて、重要なパートを任されることの多い「歌唱メンバー」の1人として人気を誇った山崎夢羽が6月27日の豊洲PITでの卒業コンサートをもって卒業したばかりだった。
これまで苦楽をともにした2人のメンバーの卒業を経て、10人体制となってから初めて臨んだ外部のフェスとなったTIF2024のステージ。「個性的なグループ」から「一人ひとりが主役」という言葉が似合うようになった、それぞれがダイヤモンドのように輝く存在感のあるグループになった姿を見せてくれた、そんなステージになった。
最近では外部のフェスでも15分という出演時間のステージはほとんど見ることのなくなったBEYOOOOONDSだが、彼女たちにとってもファンにとっても逆にプレミア感満載の「短かすぎる15分」が大盛況のまま終わった。
<セットリスト>
1. 灰toダイヤモンド
MC
2. フックの法則
3. 恋する銀河
取材・文/綿谷 翔 撮影/星 亘(本誌)