調整局面で下げ止まる銘柄は?
最近は利確の売りが多かった筆者であるが、今回の下落は待ってましたとばかりに、買いたかった値嵩株、上がりすぎていた銘柄を拾うことに専念している。しばらくは、評価損を抱えるかもしれないが、1~2年で値上がりしたらキャピタルゲインを得られればいいと思ってるからだ。これが現物株所有の強みだ。
株式取引の有名な格言に「落ちるナイフに手を出すな」というものがあるが、どうしても手を出してしまう。そのため時おりケガもするのだが、長期的にはおさまってくるものだ。ということで、今回も手を出している。
5日からは決算発表後半戦が始まり、さらに、特に欧米ではバカンスシーズンということもあり、今回の調整局面がどこで止まるのかは定かではない。
しかし、まず下げ止まるのは、好業績にも関わらず、今回の相場全体の調整で連れ安してしまった高配当銘柄ではないか。株価の急落で、配当利回りが急騰している銘柄が少なくない。
日経平均採用銘柄225社で配当利回り5%台となった企業が6社にもなった。
特に注目されるのは、円高歓迎発言もあった、
日本製鉄(5401)をはじめとする、
JFE(5411)、
神戸製鋼(5406)の鉄鋼3社だ。それぞれ、日本製鉄が5.00%、JFE5.32%、神戸製鋼5.23%という配当利回り。特に日本製鉄は2日の大幅な市場全体下げの中でもプラスで終わっていて、この配当利回りは非常に強く魅力的だ。
自動車関連では、
いすゞ(7202)が4.85%、
マツダ(7261)が4.76%、
ホンダ(7267)が4.47%となっている。
円高は輸出企業の業績を押し下げるが、例えば、マツダは2025年3月末は1ドル136円の為替レートを想定している。この発表は5月に行われたが、その時点での為替レートよりも20円も円高である。トヨタは1ドル145円、ホンダは140円を想定している。このような想定が社内で認定されていることは、当然のことながら、1ドル160円を超える円安の時点では為替予約も入れているだろう。
だから、円高だから利益が大きく削られるという見方は慎重になったほうがいい。
『つみたてよりも個別株!新NISA 次に買うべき10銘柄といつ売るべきかを教えます!』(扶桑社ムック)
今年の初めは143円台で始まった為替も、当時は年末には135円程度までの円高となるという予測が主流だった。今のような急激な為替レートの変動が止まれば、力のある大手輸出企業の見直し、物色も始まるだろう。
これら、高配当で決算も悪くなく、将来的には値上がりも期待できる銘柄に投資資金を回すとともに、円高、株安、そして、当局からの型式指定の不正問題から組織体制の改善を求める「是正命令」まで出たため大幅に下げている
トヨタ自動車(7203)も購入した銘柄だ。
1日に発表された4-6月期の営業利益が1兆3084億円と史上最高益で、通常なら大幅に株価が上がるはずなのだが、2日の株価は前日比114円安の2585円で終わってる。1月4日の年初来安値2572円とほぼ同水準まで下がっているのだ。
円高によるインバウンドへの不安、「アナと雪の女王」の世界観で作り上げたファンタジースプリングスや新たにクルーズ事業への投資資金がかさばる
オリエンタルランド(4661)の株価も大きく下げ、年初来安値圏で購入した。2日の終値は4014円だった。
さらに、とばっちりを受けたのが金融、保険株である。
本来であれば、今回の政策金利の引き上げだけでなく、植田総裁の必要とあればさらなる利上げの可能性もあるとした発言からさらに株価が上がってもおかしくない銘柄まで大きく下げた。
京都ファイナンシャルグループ(5844)、
コンコルディアFG(7186)など金融株も購入したもののひとつ。月曜日には保険会社に指値を入れた。また、7月11日には1万5485円の年初来高値を記録したものの、値嵩株でなかなか買うことのできない
ソニーグループ(6758)も大きく下げたので買い増しした銘柄のひとつだ。
先述したように5日、月曜日の市場は大きく下がることが予想されている。3日連続の大きな下げは、調整局面の序盤なのか、底値圏に近づいているのか。それはわからない。決算発表のピーク時期と重なり、荒っぽい値動きに翻弄される1週間もしれない。
※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。
<文/佐藤治彦>
経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『
つみたてよりも個別株! 新NISAこの10銘柄を買いなさい!』、『
年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『
しあわせとお金の距離について』、『
安心・安全・確実な投資の教科書』など多数 twitter:
@SatoHaruhiko