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30代でFIREを達成したのに「幸せになれなかった理由」。経験者が語る“セミリタイアの落とし穴”

日々新しいことに挑戦することが本当の幸せ

イメージ では、どうしたら自分は幸せになれるのか。それを考えるべく、私は自分の過去について振り返ってみました。すると、セミリタイアをめざして日々新しいビジネスを考えたり、自分が世の中に提供したものを喜んでもらったりしたときこそが、もっとも幸せな瞬間だったなと気が付いたのです。 「自分は、日々目標をもって、新しいことに挑戦して、人から喜ばれることが幸せなんだ」  そう気がついた私は、再び仕事を始めるようになりました。最初は、「とはいえ、本気で仕事を始めたらしんどいよな」「やることも増えるし忙しくなるのも嫌だな」との思いがあったため、どこか本気で仕事には打ち込めていなかったように思います。  しかし、中途半端に仕事をしても、中途半端な結果しか得られないため、なかなか楽しくなれない。「自分に負荷をかけないと、幸福感は高まらないのかもしれない」と気がついてからは、セミリタイア前よりもさらに毎日全力で仕事に打ち込むようになりました。  また、セミリタイア前と大きく変わったのが、楽をすることに興味がなくなり、純粋に仕事を生きがいだと感じるようになったことです。昨今日本では「好きなことで生きていく」ということや「FIRE(経済的自由の実現)」といったキーワードがとても人気ですが、これは多くの方は極力自分は面倒なことをせず楽をして良い思いをしたいと思っているからです。  しかし、楽をしたいと思っている状態というのは「仕事=面倒なこと、嫌なこと」だと本質的に信じてしまっているということなので、これは本質的には不幸なことなんだと私は結論づいています。  一度セミリタイアして良かった点は、楽することを目指して生きるよりも、世の中や他者から少しでも喜んでもらえるように試行錯誤する生き方の方が魅力的だと気づけたところと、自分もそうなりたいと思えるようになったところだと感じています。

社会貢献する人が憧れられる世の中になってほしい

 経済的自立を果たし、セミリタイアやFIREをめざすこと自体は、まったく否定するつもりはありません。ただ、経済的な自立は、あくまで「自分の納得のいく人生」を歩むうえでの通過点にしか過ぎないと思います。  問題は、その先に自分がどんな人生を望むかです。「セミリタイアで悠々自適の生活をしたい」という目標だけを追いかける人は、いざ達成した途端に、人生の目的を失ってしまいます。それこそ、かつての私のように。  では、仮にセミリタイアを実現したら、どんな目標を持つべきなのか。そこで私が提案したいのは、「自分にとって新たな挑戦となる仕事をすること」です。やはりある程度自分に負荷をかけないと人生は停滞していくからです。 「仕事をしたくなく、暇になりたいからセミリタイアするのだ」という人にとっては矛盾を感じるかもしれません。でも、挑戦や成長のない人生ほど生きている手応えが感じられないものはありません。  最近注目されているカリフォルニア大学の研究においても「1日の自由時間が5時間以上ある人は精神的に病みやすくなる」という結果が出ていますが、これはまさにセミリタイヤして暇になった人が幸福度を落としてしまうエビデンスの1つです。  これまで私は数多くの幸せな億万長者を見てきましたが、その共通点は「豊かで幸せな人は仕事が大好きだ」ということです。そして仕事が大好きだから結果が出るんですね。  結果を出すから豊かになる。そして、経済的に豊かになっても、仕事は好きだからずっと続けていき、その仕事が周囲の人に感謝され、その感謝がモチベーションとなる。こういった好循環が生まれている気がします。  逆説的な話ではありますが、「仕事が嫌いだ」と言っている人ほど、いつまでも経済的自立は実現できないのではないでしょうか。  現在、日本では「会社や仕事が嫌だ」と感じる人が多く、FIREやセミリタイアを実現した人を尊敬する風潮も根強いです。でも、FIREする人ばかりが増えると、経済も停滞するし、いまよりもっと夢のない未来が待ち受けています。  だからこそ、セミリタイアする人に憧れるのではなく、経済的自立を果たしてもなお、仕事や事業を通じて世の中に貢献するような“本当に豊かな人”たちが、世の中で憧れの存在になってほしいなと、心から思っています。 文/三凛さとし
富とお金のメンタルトレーナー。ニューヨーク州立大学卒業後、借金苦と人生の挫折からメンタルトレーニングの重要性を学び、不動産ビジネスで成功。その成功体験をもとに、人生を好転させるヒントをSNSで発信。YouTube、X、Instagramなどで合計45万人以上のフォロワーを獲得し、初書籍「親子の法則」の発行部数は6万部を記録。自身が開発したコーチングプログラムは約10年でのべ20万人以上が参加。
X(旧Twitter):@sanrin_hikiyose
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