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日清食品はなぜ「小売店に価格引き上げの圧力」をかけたのか。即席めんトップメーカーが見せた“焦りと慢心”の二面性

 

「売れる商品」だったからこそ…

 日清食品ホールディングスは、中長期経営計画において2030年度までに既存事業コア営業利益を1000億円に引き上げる計画を立てています。2023年度の実績は806億円。2024年度は846億円まで高める目標です。原材料費が高止まりする中で営業利益を引き上げ続けるのは容易ではありません。  コロナ特需が一服して販売数の大幅な伸びが見込めない中、価格改定による押し上げ効果に期待したのでしょう。  ここで疑問に感じるのは、日清食品が小売事業者に対してなぜそこまで強い交渉力を持っていたのかということ。これは単純に「カップヌードル」などの日清食品ブランドが強力で、消費者の選好度が高いため。すなわち、小売事業者からすれば、売れる商品なのでメーカーの意向に沿ったということでしょう。

「カップヌードル」好きは6割に及ぶ

 マイボイスコムの「【 カップめん 】に関するアンケート調査(第10回)」によると、好きなカップラーメンの銘柄で「カップヌードル」を挙げた人の割合は60%に及んでいます。「マルちゃん麺づくり」「スーパーカップ」などは上位といっても10%程度に過ぎません。日清食品のカップラーメンは正に圧倒的なのです。  カップ焼きそばでも、「日清焼そばU.F.O」は33.9%。「明星一平ちゃん夜店の焼そば」「ペヤングソースやきそば」は20%程度に留まっています。  カップラーメンの販売構成比は6割ほどがスーパーマーケット。コンビニエンスストアが2割を占めています。現在、セブン&アイ・ホールディングスやイオンはPB商品の開発を強化しており、「セブンプレミアム 蒙古タンメン」などは一定の人気を獲得しています。  しかし、スーパーマーケット年次統計調査によると、総売上高に占めるPB商品売上高比率は10%程度。たとえ小売業者がPB商品を扱っていたとしても、圧倒的なシェアを持つメーカーに対して強い交渉力を持っているわけではありません。
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「年間200億円」もの広告宣伝費をブランド構築に投入
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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