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大谷翔平「ポストシーズンの投手起用」はあるのか。ドジャース監督を悩ませる“厳しすぎる台所事情”

 現地時間18日(日本時間19日)、敵地マイアミでマーリンズと対戦したドジャースは投打がしっかりかみ合い、8-4で快勝。3年連続の地区優勝にまた一歩近づいた。  1番指名打者(DH)で出場した大谷翔平は、初回の第1打席に厳しい内角の球をレフト前に運び出塁すると、次打者ムーキー・ベッツの初球にすかさず二盗に成功。今季の盗塁数を49個に伸ばし、自身初の50盗塁にリーチをかけた。  なお、この試合で大谷のバットから待望の一発は生まれず、50本塁打には残り10試合で2本のまま。果たしていつどこで大谷は「50本塁打&50盗塁」を達成するのだろうか——。

ポストシーズンで大谷の投手起用はあるのか

大谷翔平

現地時間18日、マーリンズ戦の試合前にブルペンで投球練習をする大谷翔平 
写真/産経新聞社

 メジャー史上初の「50-50」にまい進する大谷だが、ここにきて別の話題も熱を帯びている。  それがポストシーズンで大谷を投手として起用する案だ。日米のメディアを巻き込み、その是非が多方面で取り沙汰されている。  大谷が自身2度目のトミー・ジョン手術に踏み切ったのは、エンゼルス時代の昨年9月。通常、トミー・ジョン手術後は実戦登板に1年から1年半の期間が必要だ。  実際に、大谷は1度目の手術を2018年10月に受けたが、復帰登板を果たしたのは2020年7月。この時は新型コロナの感染拡大で開幕が大きくずれ込んだ影響もあったが、チームも本人もリハビリには慎重かつ細心の注意を払っていた。  大谷が2度目のトミー・ジョン手術を受けたのは昨年9月19日。まだ1年を迎えるというタイミングで、10月にマウンドに登るかどうかの議論を持ち出すのは現実離れしていると言わざるを得ない。

かつての指揮官の“投手起用発言”が話題に

 もちろんチームも慎重姿勢を崩しておらず、ポストシーズンで登板する可能性はかなり低いだろう。ただ、エンゼルス時代の恩師からは投手・大谷の早期復帰を「自分なら容認する」といった意見も出ている。  20年から22年までエンゼルスを率いたジョー・マドン氏は、現地17日、『MLBネットワーク』の「MLBナウ」に出演。大谷が投げられる状態であればという前提条件のもと、「私なら試合終盤の2~3イニングなら登板させるだろう」と発言したことが議論を巻き起こした。  マドン氏の意見に対し、現地ファンからは、「大谷が投手として復帰すれば、二刀流として唯一無二の才能でファンを魅了し、MLBに劇的な影響を与える可能性がある」「当初のプラン通り、投手としての復帰は来年にすべきだろう」「リスクはあるが、大谷が投げられると判断すればいいんじゃないか。ただ100%でないなら、来年まで待つべきだ」など賛否が飛び交っている状況だ。

ポストシーズン敗退はロバーツ監督の進退に関わる可能性も

 そんななか、ドジャースを率いるデーブ・ロバーツ監督は、「(可能性は)ゼロではない」と含みを持たせつつも、大谷にとってリスクが高いことはさせないだろう。ただし、自身のクビが掛かってくるとなると、登板させたいというのが本音かもしれない。  というのも、ドジャースを率いて9年目のロバーツ監督は、昨季までの8年間でチームを7度の地区優勝に導いた名将ではあるが、ポストシーズンでたびたび疑問符がつく采配を振るうなど、チームの実力を発揮させることなく敗れ去ることも少なくなかった。  ドジャースは、ロバーツ監督の下、17年、18年、20年と3度ワールドシリーズに進出しているものの、世界一に輝いたのはコロナ禍で短縮シーズンとなった20年だけ。21年はリーグ優勝決定シリーズでブレーブスに敗れ、22年と23年は地区シリーズで格下相手に苦杯をなめている。  豊富な資金力を武器に世界一を義務付けられているドジャースだけに、地区優勝ですらあくまでも通過点という位置づけだ。今季もポストシーズンで早期敗退となれば、来季まで契約を残しているとはいえ、ロバーツ監督自身の進退にも関わってくるだろう。
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ドジャース投手陣の厳しすぎる台所事情
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1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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