「自傷行為を止めるため」刺青を彫り続けた女性が、「舌先を2つに割った」ときに立てた誓い
目元に派手なメイクを施し、刺青やピアス、スプリットタンなどが目を引くその女性は、ゴメス奈良紫さん(37歳)。現在は、イラストレイターとして活動もする2児の母だ。奇抜なそのファッションから想像もつかない厳格な家庭で育ち、独立後に夜職に転じた彼女の波乱に満ちた軌跡を追う。
ゴメス奈良紫さんは言う。「今でも、両親には敬語で話します」と。物心ついたときから、親に対してわがままを言ったりすることはなかったという。そればかりか、ゴメスさんたちきょうだいは皆、母親のその日の機嫌を何よりも気にしていたという。
「助産師で、かつて助産院を開業していた母は、私が幼い頃の憧れでした。医師の立ち会いのもと、患者さんに注射をする姿がとてもかっこ良かったんです。一方で、甲状腺の病気で職を辞してからの母は、朝起きてくる時間がどんどん遅くなり、私たちは自分で身支度をして朝ご飯を作って、登校していました。おそらく母自身、ままならない自分の生活に苛立つ気持ちがあったのだと思います。帰宅後、本当に些細なことで怒鳴られ、殴られる日々でした」
過敏な母親は、たとえばこんな「些細なこと」でゴメスさんに当たり散らした。
「私にリモコンを片付けるように命じたのに兄が片付けたとか、その程度のことです。母は激昂すると、明らかに目つきが変わってしまい、それまでと別人のようになってしまいます。息ができなくなるまで蹴られる、包丁を突き立てられる、フォークで頭を刺される、ということも経験しました。父は経営者でしたが、心根の優しすぎる人で、母に対する抑止力にはならない人でした」
母は旅行が好きで、たびたび家族旅行が開催されたが、それは家族から母への「接待」にも聞こえてくる。
「たとえば道中の車でどんな音楽をかけるかなども、すべて母の顔色を伺いながらです。もちろん、どんな景色を見せるか、どんな温泉に入らせるか、なども一定の緊張感がありますよね」
「幼い頃の憧れだった母」が病を機に変貌
母への「接待」のようだった家族旅行
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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