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コロナで売上7割減、月400万円赤字…激戦区の「ラブホテル社長」が明かす生き残る秘訣と“困った迷惑客”

リピーターが7割。集客アイデアには報酬も」

 工藤さんがそのペースを維持できるように、4人の社員と20人のパート社員たちと力を注ぐのが、館内でのイベントだ。年末年始、バレンタインデー、市内の桜満開日を当てるクイズ、夏祭り、お盆、リンゴを浴槽に入れるリンゴ風呂、ハロウィン、お風呂の泡を10倍にする”バブルス10倍”、クリスマスなど毎月、イベントをする。さらに毎年、内容を変えている。 「お客様の7割前後がリピーターですから、常に新鮮さを感じ取っていただけるように工夫しているのです。いつも、全員の力でめちゃめちゃ凝ったイベントに毎回しています。赤字覚悟の試みの時もあるのですが、お客様に楽しんでいただきたいのです」  たとえば今年のクリスマスならば、大きな機械式のサンタクロースが登場したり、いたるところに装飾やグッズがあり、楽しい雰囲気を醸し出す。クリスマスにふさわしい飲み物や食べ物もつくる。オリジナルのプチシュークリームだ。 「僕よりも、社員やパートの皆さんのほうがアイデアははるかに豊富で、料理も上手い。いつもすごいなと感心しています。お客様から注文が多い場合、そのアイデアを出してくれた社員やパート社員には、感謝の意味を込めて給与とは別に一定のお金を支払っています。優れたアイデアは、お金に代えないと出てこないと思います。お金を払わずに、アイデアを求めるのは僕は避けたい。自分でアイデアを出すと、責任感を持つようになるのです」

大雪の日は「1日3回。2~3時間除雪」

ホテル水色の詩

期間限定でウニ握りやツブ貝焼きも(※情報は2024年4月時点)

 1か月ごとのイベント以外にも、毎日、様々なイベントを行う。1か月間で同じイベントは2日ないようにしているのだという。飲み物や食べ物にも様々な工夫をしている。最近は、きなこ団子やミニマフィン、サラダパフェ、ようかんパフェ、アワビ入りお雑煮を始めた。衛生面に細心の注意を払いながら、常に100種類以上のメニューをそろえる。このメニューも随時、変えている。 「最近の目玉は、お部屋で炊き上げる“ホタテ釜飯”や“活メニュー”。たとえば、当店独自の水槽で育てたうえで料理する活アワビや活イカ、活ホタテ、活ホッキ、活エビなどです。活アワビでは酒蒸しや踊り焼き、刺しがあります。活エビでは、ボタン焼きが特に人気です。お部屋でカップルで調理をしていただくこともできます」  イベントやメニューをX(旧ツイッター)やYouTubeチャンネルで随時紹介する。全員でイベントに全力を注ぎ、常に新しく、清潔で楽しいホテルにしているが、1日36組のペースを維持できない日があるという。12~3月、雪が大量に積もる日は外に出る人が減る。そのような日は工藤さんと兄が中心になり、1日少なくとも3回程、除雪をする。1回につき、2~3時間。 「どか雪の日は、車が走るメインロードからホテル水色の詩までの約60メートルの道を除雪車に乗り、深夜3時間程かけて雪解けをしています。この道は私たちのホテルの敷地外ですが。そばには雪をどけていないから、駐車場にまで車を走らせられないホテルがあります。そのような方が、ホテル水色の詩に来てくださるのです」
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1か月で最大400万円赤字が半年続く
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ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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