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コロナで売上7割減、月400万円赤字…激戦区の「ラブホテル社長」が明かす生き残る秘訣と“困った迷惑客”

1か月で最大400万円赤字が半年続く

 1日36組のペースが維持できなくなったのは2020年だ。この年、新型コロナウィルスの感染が本格化する。利用者は大幅に減るが、社員やパート社員の人件費、ホテルの光熱費をはじめ、各種のコストは発生する。税金の支払いもある。1か月で300万~400万円の持ち出し(赤字)となり、この状態が約半年続いた。 「経営を続けるのは難しくなるかも、と一時は思ったのです。いつ、感染拡大の影響が沈静化するのかわかりませんでしたから。売上は前年度比7割マイナスでした。それでも7~8か月後にお客様が増え、1年後に元のペースに戻りました」  1日36組のペースを守るためには、リピーターを増やすことが大切のようだ。そのために衛生面にも力を注ぐ。2024年の今も館内や室内の除菌対策には抜かりない。各部屋の清掃では、亡き父の教えである「掃除がとても大事。毛1本、水滴1つも残すな。不潔な印象を与えたら、ラブホテルは潰れる」を守り、全員で注意しながら取り組む。

焼肉セットと肉を持ち込む迷惑客も

ホテル水色の詩

有限会社工藤観光代表取締役社長の工藤丈さん

 許容範囲を超えるほどに室内を汚す人が数年に1組くらいのペースでいて、困る時があるという。10年以上前に大便がトイレ以外の数か所にあったために、室内を徹底して清掃、除菌をした。なぜか、床のいたるところにガムテープが貼ってあった時もあるそうだ。 「室内に焼肉セットと肉を持ち込み、食べていた方たちもいます。ご利用は大変にありがたいのですが、臭いが充満し、なかなか消えないのです。ほかのお客様がこの部屋を利用できなくなります。これは困りますので、どうかお止めくださいと申し上げました。  素敵なお客様もいます。ある日、清掃のために入室したところ、シーツが赤くなっていました。テーブルの上にそのお詫びが書かれた手紙と1000円が置いてありました。お金はありがたく頂戴し、ジュースを買い、社員やパート社員で飲ませていただきました」  全館、全室の盗聴、盗撮対策もしている。工藤さんが盗聴器・盗聴カメラ発見器を使い、隅々まで調べる。
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幼少期はラブホ経営が恥ずかしかった時期も
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ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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