更新日:2025年01月21日 19:02
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増殖するタワマンで駅の利用者数が激変し、鉄道会社のビジネスモデルは根底から崩壊…JR京葉線が“通勤快速全廃”した事情を読み解く

遠方に電車を走らせることが“非効率”に

武蔵小杉駅近隣タワマン住民は朝のラッシュ時に一斉に駅へと向かいます。そのタワマン住民が東京方面へと向かう電車に乗ろうとして長蛇の列をつくることが日常茶飯事になりました。駅混雑は日に日に激化し、危険水域に達していたのです。 武蔵小杉駅の混雑は放置することができません。事故が起きれば、鉄道事業者であるJRの運行にも支障をきたし、電車の遅延は社会を混乱させることにもなるからです。 この混雑問題は行政が対処に乗り出す事態へと発展しました。そして、同じようにタワマンが引き起こす局地的な人口増による混雑の問題が京葉線の沿線でも起きてしまうのです。 京葉線の沿線で人口増が顕著だったのは新浦安駅ですが、駅前にららぽーとをはじめとする商業施設が立ち並ぶ南船橋駅も発展。そのほかの駅でも、タワマンが建ち始めていきます。そのタワマンの波は、年を経るごとに東京へと寄っていきました。都心寄りに通勤・通学需要が増えたことで、JRはわざわざ内房線・外房線といった遠方に電車を走らせる必要はなくなりました。遠方に電車を走らせることは非効率なのです。

タワマンは鉄道会社にとって厄介な存在

規模にもよりますが、タワマンは一棟が完成すると人口は500から1000人単位で増えます。タワマンが2~3棟できるだけで街の人口は急増し、駅の利用者数も激変してしまいます。タワマンは駅を加速度的に混雑させる、鉄道会社にとって厄介な存在なのです。 鉄道会社も、タワマンが完成するたびにダイヤを改正して停車駅を変更するわけにはいきません。そんなことをすれば鉄道員は混乱しますし、なにより利用者に多大な不便を強いることになるからです。 京葉線は沿線全体で、タワマンが増える傾向を示しています。その先手を打って、JR東日本千葉支社は京葉線の通勤快速を全廃するとともに朝夕の快速の廃止という措置を講じたのだろうと推測できます。 そのほか、京葉線には武蔵野線の列車が走ってくることもダイヤ上の支障になっていました。武蔵野線も近年は沿線のベッドタウン化が著しく進み、東京駅へと通勤する需要は大きく増加しています。
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千葉県や千葉市がJR東日本へ直訴するも…
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フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『鉄道がつなぐ昭和100年史』(ビジネス社)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

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