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「25歳で武道館を借りてディスコに」「素人なのに“帯のラジオ番組”DJに」乱一世74歳の“波乱に満ちた”半生

素人がいきなり“ラジオの帯番組”を任された

ラジオDJになったーーそこから次はどの道へ? 乱:結局その会社も1年ほどで辞めて、イベントを通じて知り合ったニッポン放送の仲のいい営業から「暇なら遊びに来てください」と言われて。 行ったら上野修というプロデューサーがいて「これからどうするの?」「趣味は?」なんて聞かれるままに話してたら「来月からうちでしゃべって」と。 ーーいきなりですね。しかもノリが軽い。 乱:それが平凡パンチ提供の『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』という番組です。 上野さんは伝説のプロデューサーで、夜な夜なヒッピーが集まって酒を飲んでいた新宿アルタ前に行って、ロングヘアーのカツラをわざわざ被って彼らと仲間になりに行くような人で。 ーーその番組は週1回の出演とか? 乱:いえ、月~金の帯(笑)。15分番組のうち、曲やCMを除くとしゃべりはだいたい7分くらい。でも、夜の7時にラジオ局に入って収録を始めて、でてくるのが朝の4時とか。 ーーどうしてそんなに時間がかかるんですか。 乱:まず「みなさん、こんばんわ」って言ったら、すぐさま上野さんが「はいダメ」と。でも答えを教えてくれない。自分で探せ、と。困っていると「ラジオは『みなさん』で聴くか?『あなた』なんだよ」と。そういう教育を現場で受けましたね。

ラジオで学んだインタビューの作法は「相手を怒らせろ」

ーー直接、叩き込まれたわけですね。 乱:その一方で「誰か会いたい人いる?」って聞かれて僕が答えると、上野さんはだいたい叶えてくれました。 インタビューの作法というかやり方は『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』の4年間で培ったと今でも思っています。 ただ、ホント厳しかったですね。「じゃあなんで俺を呼んだの?」って叫びたくなるくらい。あとで聞いた話ですが、僕が断っていたら松山千春がやってたかもしれないと。千春はやらなくて良かったと思います(笑)。 ーーそこで教わったインタビューの作法がすごく気になります。 乱:「お休みの日は何してるんですか」とか「好きな食べ物は何ですか」みたいな通りいっぺんの質問は一切ダメ。できれば相手を怒らせろ、とにかく相手をアツくさせろと。 あるとき、冒険家の植村直己さんがゲストでいらっしゃったんですが、僕は自然とか全然興味なくて。そこで「いくら儲かるんですか?」「どこから金がでるんですか?」「結局はネームバリューを上げたいために北極とか南極に行くんですか?」って聞いたんです。 ーーなかなか怖いもの知らずですね。 乱:そしたら植村さんがおもむろに立ち上がって「今日はこれで失礼します」。ディレクターをはじめスタッフは慌てて植村さんを引き留めながら、彼に見えないところで僕に向かって親指を立ててました(笑)。 ーーそのあと、植村さんは……。 乱:戻ってきて話してくれました。さすがですね。今思えば、同じことを聞くにしても聞き方ってあるじゃないですか。そこは自分も未熟だったと思います。 ーーそのほかに学んだことは? 乱:ウォーミングアップ。本題に入る前に、関係ない日常の出来事をさらっと話すんです。 「さっきロビーで松田聖子ちゃんと松本伊代ちゃんがいたんですけど、どっちがタイプですか? 僕は松田聖子ちゃんですけど」みたいな。特にそれは『トゥナイト』のとき役に立ちましたね。 ほとんどが素人さん相手の取材だったので、最初に的外れなところから入って空気を和らげるというテクニックです。
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芸名の由来と秋元康から言われた言葉
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株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Xアカウント:@Yuichitter

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